内容説明
米不足で深刻化する商都・大坂。江戸からやってきた剣豪、光武利之は、この地でひとりの友を得る。私塾「洗心洞」を主宰する大塩平八郎の息子、格之助。救民を掲げて先鋭化する大塩一党、背後に見え隠れする幕閣内の政争。時代の奔流はふたりの男を飲み込み、いままさに幕末への扉を開こうとしている。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
昭和22(1947)年、佐賀県唐津市生れ。47年中央大学法学部卒。58年「眠りなき夜」で第1回日本冒険小説協会大賞、第4回吉川英治文学新人賞、平成3年「破軍の星」で第4回柴田錬三郎賞、16年「楊家将」で第38回吉川英治文学賞、17年「水滸伝」で第9回司馬遼太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キャプテン
49
★★★★☆_「きゃぷ衛門とゆく時の旅フェア」【西暦1837年江戸時代─大塩平八郎の乱編】天保の大飢饉が呼び寄せる、乱れた世相。その最中。「救心」を掲げる大塩平八郎殿。商人の町、大阪を焼く炎は、怒り。それを静かに見つめる剣豪と、平八郎殿の息子。正義の渇望が作り上げる虚空。人の欲望に翻弄され、民を救うために立ち上がり、しかし蜂起は惨敗し、救うべき民の町は焼け落ちた。それが平八郎の乱にござる。どこまでも虚しい。だがしかし、この虚ろなる思いが、大火の巻き起こす風に乗り、やがて形を変え、ついに幕末への扉が開かれる。2018/02/16
大阪魂
40
1837年の大塩平八郎の乱がテーマ、ゆうても主人公はお庭番の庶子で剣の達人の村垣利之!この利之が、大塩平八郎のため愚直に「正義」を目指す息子・大塩格之助に惹かれ、平八郎を巡るいろんな政治のドロドロの動きに巻き込まれてく…この本読みながらWikiで乱の史実とかその後の水野忠邦の改革とかみてたら、北方さんが描いてはるように大塩平八郎も大きな政治の道具に使われたんかもやなあておもた…このあたりから朝廷と薩摩藩の結託とかもでてきたみたいやし…北方さんこれまで中国史ばっかし読んでたけど日本史の方も追っかけてみる!2025/01/22
金吾
23
北方さんの本は史実がどうだとかを考えることなく歴史を題材にした小説を楽しむものであると思っていますがこの本もそうです。大塩平八郎の乱の背景というよりも親に殉じる生真面目息子と大局は見えている名家の庶子の友情の話であると感じました。2021/06/10
TheWho
19
天保8年(1837年)に、大坂町奉行所の元与力大塩平八郎が起こした反乱、所謂「大塩平八郎の乱」の顛末をハードボイルドと歴史小説の著者が描く時代絵巻。物語は、幕府御庭番家筋である村垣定行の庶子の主人公が飢饉の余波で米不足の大坂に訪れ、不穏な世情の裏に隠された幕閣内の政争や朝廷、外様大名、蝦夷地が絡んだ暗部を解き明かす壮大なミステリーとして展開していく。そして傍観者の主人公の視点で、無骨な程正義を貫き、己の哲学に殉ずる男の生き様を語る。正に歴史ハードボイルド小説と言える面白い一冊です。2015/10/17
巨峰
15
大塩平八郎の乱前後の大阪を、剣客光武と大塩の養子格之助との友情を中心に描ききった。北方謙三の日本物は理屈が小煩いが、それでも、そう割り切って読むと中々他の小説家にない魅力がある。2011/07/11
-
- 和書
- ハバナ零年