内容説明
月日貝、五月闇、河骨、青北風、夜神楽、寒茜など…四季を彩る季語に触発されながら、愛を巡る揺らぎと畏れを主題に、生命の不思議、稠密な性の交感、人生の哀切をみごとに官能的な文章に結晶させた名品12の短篇連作集。谷崎賞作家が描く、滅びへと向かう主人公たちのなまめかしくも妖しく、美しく切ない12の人生。
著者等紹介
高樹のぶ子[タカギノブコ]
1946年山口県生まれ。東京女子大学短期大学部卒。80年、デビュー作「その細き道」を「文学界」に発表、創作活動を始める。84年「光抱く友よ」で第90回芥川賞を、95年「水脈」で第34回女流文学賞を、99年「透光の樹」で第35回谷崎潤一郎賞を受賞。2002年から芥川賞選考委員
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
457
【読メエロ部】通常わたしのエロ部活は「そろそろエロ注入するか」って気合い入れて読むのだけれど、こちらは予測なく波に飲まれてしまった。四季を彩どる季語に触発されつつ、特徴のあるまどろっこしい文章を読まされて、途中下車しようかしらん、と思い始めたまさにそのとき!『茸』でいきなり持っていかれた。この短編だけで白いご飯3膳いける。2019/06/07
じいじ
100
愛を主題に、月日貝、端午、河骨など四季を彩る12の季語になぞられた短篇集。男を狂わす妖艶な女、男の嫉妬、男の哀れ弱さ、夫婦の機微…を高樹流の官能的文章で紡いだ作品。全体的には、予想に反して毒は薄目です。ちょっと背筋が寒くなる話もあって、ホラー、ミステリーの面白さを堪能できます。2017/04/23
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
78
季節に寄り添うように日陰でひっそりと咲く花のような12の短篇集。短歌には詳しくないが、『月日貝』『五月闇』『河骨』『青北風』『夜神楽』など季語をタイトルに付しているらしい。父への憧憬と性愛の境界を知らない女性、記憶を喪った妻との約束を果たすため彼女の故郷にやってきた夫婦、父に捨てられた母に同情しながらも母を捨てることを決めた娘、刑務所の檻の中で自分が殺した妻の思い出と共に生きる男……。静かだが官能的。情念を内側に秘めた烈しさを感じる。2015/09/19
ふぅわん
61
【人に対する執着、執念。ちと暗めの⁈官能本】読メの方のレビューを見てチョイスした本。四季を彩るホラー、ミステリー愛の12短編集。読後は不思議な余韻が残るものなど様々。大切な人との時間が消えるのは辛いねぇ。「月日貝」と「茸」が好き。男の嫉妬に狂う「夜神楽」男の嫉妬は女より執拗⁈いや、悪夢かな。男には女の無知とも思える巧妙な笑顔の方が怖いのかもしれない。2019/06/22
かこりむ
17
とても濃い12の物語。現実とそうでないものの曖昧さが不思議な余韻を残す。嫉妬に狂って自分の妻を殺した男がみる悪夢が恐ろしい「夜神楽」。怪しい女に誘われるままに滅びていくのも悪くないと思える「鬼火」。その他、それぞれの季節、それぞれの場面で、人の情の深さと複雑さを感じさせられた。2016/09/11
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