内容説明
『愛染かつら』『西鶴一代女』『雨月物語』など数々の名作に出演、「大女優」の名をほしいままにした銀幕のスター・田中絹代。清純派から演技派へ脱皮、後には老いと戦いながらも死ぬまで演じ続けた絹代の凄絶な生涯は、激動の昭和史そのものだった。独身をつらぬき「映画と結婚した」絹代の生涯を精緻に描いた評伝小説の労作。
目次
序章 ハレー彗星
第1章 流離
第2章 幻夢の館
第3章 鎌倉御殿
第4章 メロドラマの季節
第5章 冬の時代
第6章 回生
終章 嵐が丘の夕陽
著者等紹介
古川薫[フルカワカオル]
大正14(1925)年、下関に生れる。山口大学卒。山口新聞編集局長を経て、文筆生活に入る。平成3年藤原義江を描いた『漂泊者のアリア』で第104回直木賞受賞
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感想・レビュー
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どんぐり
70
女優田中絹代の評伝小説である。7歳のときに下関から家族とともに追われ、大阪の楽天地で琵琶少女歌劇に入団。15歳で松竹キネマ下加茂撮影所の大部屋女優となり、代表作『愛染かつら』で松竹の看板女優となる。この映画の主題歌となった「花も嵐も踏み越えて、行くが男の生きる道」が本題のもとになっている。劇中で絹代が着るナース服は、聖路加病院のものを参考にしたそうだが、あいにく映画は未見である。絹代の映画なら、『陸軍』で兵士の行進の中に息子を必死に探す母親、『楢山節考』の石臼で前歯を折る老婆の演技が印象深い。生涯独身であ2020/11/15
Gen Kato
4
新藤兼人『小説田中絹代』があまりに面白かったので、あえて読まずにいた本。もっと早く読めばよかったな。清水宏や溝口健二、付き人仲摩新吉との関係などの基本線は当然新藤本と大きくは変わらないのだけど、「監督」田中絹代への評価や「女優」という「働く女」への目配りが決定的に違う。はっきり裏を取れないロマンス(情事)への言及も意識的に避けた様子が窺える。すぐれた評伝だと思う。2017/08/24
たく
0
凄い人生だ。一人で家族、いや親族養ったのか…2014/09/21