出版社内容情報
看板特急「セマウル号」に乗って史跡を訪ねる韓国鉄道紀行と、ペレストロイカで乗れるようになったサハリン鉄道の旅、二篇を収録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
357
宮脇鉄道御大によるタイトル通りの韓国・サハリン鉄道紀行。韓国行では珍しく、編集者を伴わない一人旅。ソウルを起点にセマウル号(特急)、ムグンファ号(急行)、トンイル号(準急)、ピドゥルギ号(各駅)を乗り継いで、大田、全州経由で麗水へ。そして麗水から釜山までは水中翼船の旅。宮脇がもう少し若ければ、7時間もかかるとはいえ、この間も鉄道にしたはず(ちなみに水中翼船だと3時間40分)。以下は韓国の中央線とも呼ぶべき区間を経由してソウルに帰着。さすがになかなかよく考えられたプランだと思う。サハリン篇はまた後日。2020/08/25
まーくん
84
先日、鉄路サハリンを旅した梯さんの『サガレン』を読み、触れられていた宮脇先生のこの本をもう一度。いつも思うのだが、すぐに文中に入り込める気持ちの良さ。淡々と旅路を語りながら、少しとぼけた味もある文章家。梯さんの四半世紀前、崩壊直前のソ連。僅か8年前、大韓航空機を撃墜した軍事国家。様々な制約の中、垣間見た現地の様子を綴る。東ドイツ製の特別観光列車を見守る現地の人々に「敗戦直後、空腹でホームにしゃがみこんでいた私たち日本人を見下すように通過して行った進駐軍専用列車を思い出す」。サハリンが日本に一番近づいた時。2020/07/17
ドナルド@灯れ松明の火
14
海外版だが視点が国内と変わらず韓国やソ連の国情や気風がぐいぐいと伝わってくる。韓国の国民性が昔から変わっていないなと感じた。サハリンでは戦前の日本の鉄道の旧跡が見られ認識を改めさせられた。2016/11/20
さっと
7
著者晩年のライフワークとなった歴史紀行の古代篇の副産物として生まれた「韓国鉄道紀行」と、戦争のかげを色濃く残すソ連時代(!)のサハリン島(樺太)への団体観光旅行の記録「サハリン鉄道紀行」の二編収録。どちらもそれほど長くないけれど、時代背景を考えると、サハリン篇は歴史がぎゅっと凝縮された濃密で貴重な記録かもしれない。2017/09/06
のぞみ
5
戦争によって「近いからこそ遠い国」となってしまった韓国、そしてサハリン。宮脇氏と共に車窓を眺めながら旅する二つの国になぜか郷愁すら覚える。旅の中で宮脇氏と個人的に接した現地の人々は皆、不思議なほど日本人に優しい。恨んでも仕方ないような経験をした世代の人ほど、日本人に優しい。それが国家という形の無い大きなモノになった途端いがみ合ってしまう。それがまた戦争を生むのだろう。どうかどの国でも、100年後も、列車が時刻表通りに走っていますように。2017/01/31