出版社内容情報
"死"と向い合うことは、"生"を考えること。長年、納棺の仕事に取り組んだ筆者が育んできた詩心と哲学を澄明な文で綴る"生命の本"
内容説明
掌に受ければ瞬く間に水になってしまうみぞれ。日本海の鉛色の空から、そのみぞれが降るなか、著者は死者を棺に納める仕事を続けてきた。一見、顔をそむけたくなる風景に対峙しながら、著者は宮沢賢治や親鸞に導かれるかのように「光」を見出す。「生」と「死」を考えるために読み継がれてほしい一冊。
目次
納棺夫日記(みぞれの季節;人の死いろいろ;ひかりといのち)
『納棺夫日記』を著して
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
226
「おくりびと」の”元ネタ”の一部となった1冊。改めて手に取って見た。 著者が、冠婚葬祭の会社に入社した日から書き綴った日記を編纂したもの。就職後、体を求めた妻に「汚らわしい」と、拒まれたシーンが生々しく描写されている。死を扱う人への社会的差別は今でも存在している、のだろう。2022/11/29
あつひめ
89
おくりびとを読んでいたので、あー、その会話は青木さんの体験だったのか…。と、映画の場面を浮かべたりもした。哲学とか、宗教とか、難しいことはわからない私ですが、生まれた日から死に向かってカウントダウンしていると思いながら生きているので、自らの死に対しては心構えがあっても、大切な人との別れは未だに考えられないのが現実。核家族化や、葬儀社の普及で家族で死者を浄めることがほとんどなくなった今、死というものの生々しさも薄れてしまったかもしれない。いつの日か大切な人との別れを私はどう迎えるだろう。2014/09/02
はつばあば
72
そろそろ私も人生の終焉に向かうお年頃。死というものに敏感になってきた。今はまだ母がいてくれるから実家にも帰れる。爺様がいてくれるから二人で何とか生活ができている。ご近所様を見渡せば如何に独居老人が多いか。死に対して悟りもせず、一人になることのみに恐怖を覚えながら日々を送っている。人が誕生して終焉を迎えるのは生を受けた者の定め。どうせ終焉を迎えるならISなどの自爆テロや戦争の片棒を担いでの巻き添えはゴメンだ。昔から「畳の上で死を迎えたい」と云う言葉があるが・・孤独死では・・否、死んでしまえば分からないかも。2016/01/09
阿呆った(旧・ことうら)
58
<蛆を掃き集めているうちに、1匹1匹の蛆が鮮明に見えてきた。そして、蛆たちが捕まるまいと必死に逃げているのに気づいた。蛆も生命なのだ。そう思うと蛆たちが光って見えた。>2008年の映画「おくりびと」の元になった本。読みたいと思っていたのに忘れていた。映画と内容は異なるんですね。2017/01/31
SOHSA
49
《購入本》先日観た映画「おくりびと」の原作ということで手にとった。飾り気やてらいが一切なく、実直な文章で、死者や死と向き合う作者の現実が読み手にひしひしと伝わってきた。『納棺夫日記』第3章は浄土真宗親鸞の教えを作者の体験を通じての理解をもとにわかりやすく解説している。第1章、第2章とはまた違った趣となっており、第3章は独立した著作として読んでみるのも面白い。また本書の中でインディアンの言葉として紹介されている「しっかりした人は頭では考えない。狂った人間だけが頭で考える。」はなかなかに痛烈な言葉だった。2014/10/25
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