出版社内容情報
中国奥地を商用で旅する商社マンは、現代に生きる「桃源郷」にまよいこんだ。そこで体験する奇怪な事件の数々。芥川賞受賞の秀作
内容説明
中国奥地を旅する日本人商社マンが、桃源郷の名をもつ村に迷い込んだ。そこで彼は、村の名前からは想像もつかない奇怪な出来事にであった。謎の溺死体、犬肉を食らう饗宴…。桃花の薫りがする女に導かれるように村の秘密へと近づき、ついに彼が見た真の村の姿とは。話題の芥川賞受賞作と他一篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
172
第103回(平成2年度上半期) 芥川賞受賞。 加藤さんと橘の中国の 村体験とでもいうのだろうか。桃源県桃花源村…何となく、心惹かれる名前。 1990年の本に「デング熱」 が出てきたのには驚いたが…。読んでいて著者が 描こうとする中国の村の 世界に正直入り込めなかった。女性とのかかわり合いも村の名前に由来した 出来事だったのか、垣間見られる日本人への悪意は 村の閉塞感の描写なのか、 よくわからないまま読了してしまった、そんな読後感だった。2014/09/27
ヴェネツィア
92
1990年上半期芥川賞受賞作。同時期には、その後同賞を受賞した奥泉光、小川洋子、荻野アンナが名を連ねていた。そうした中での受賞なのだが、この作家と編集者には本を売る気があるのだろうかと思う。『村の名前』―こんなタイトルに誰が魅かれるだろう。内容を読めば、それが世にも名高い村であったことがわかるのだが。作品には現代中国の寒村にまで及ぶ権力構造と、村の様子が強いリアリティを持って描かれている。シュールと評する委員もいたが、この小説はあくまでもリアリズム小説の、これまでとは違った方向からのアプローチなのだ。 2013/08/22
おいしゃん
58
【芥川賞作品】初読み作家月間、9人目。難解。舞台は表題作は中国の僻地、もう一編は埼玉。書いてあることは突飛なことでもないのだが、モチーフや、何がいいたいのかはさっぱり理解できず…。夢と現実の狭間にいるような文体は癖になりそうでもあるが、しばらくはお腹いっぱい。2016/12/25
はらぺこ
51
表題作『村の名前』は少し不思議な話。でも最終的に理由は明かされるのでファンタジーでもメルヘンでもない話。それにしては多少モヤモヤは残る。好きかどうかは別にして、自分の読書力の無さで少し状況が分かり難いと感じた場面は有りましたが難解ではないので読み易い事は読み易かったです。 もう1つの『犬をかけて』は分かるような分からんような・・・。2012/04/18
hit4papa
43
商談で滞在した中国の田舎の村。その名は桃花源。幻想的な村の名前ではあるものの、主人公は行く先々で現実的な商売上のゴダゴタに巻き込まれます。かの国の人々と日本人の気質が良く著されています。そんななか、ちょいちょい味わう不思議体験。夢か現か幻しか。ファンタジーとまでにいかず、教訓を示唆するものでもありません。揺蕩うというべきスッキリしない寸止め感が本作品の味わいなのでしょうね。文学的に良くても小説として面白いかは別です。同時収録、妻の怪し行動に妄想炸裂「犬かけて」はややこしさだけが印象に残りました。【芥川賞】2018/03/20