内容説明
初航海の途中、海援隊のいろは丸は事故で沈んだ。相手船、紀州藩籍の明光丸艦長高柳は、いろは丸の代表者、才谷梅太郎のとらえどころのない対応に不安を覚える。激動の時代、野心と志のために手段を選ばず行動する男たちと、藩の生き残りのため奔走する男たちを背景に、坂本龍馬のしたたかな策略家ぶりを描く異色の幕末小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぱぷお
5
いろは丸の沈没事故から話が始まる。過失が大きかったのはいろは丸側であったにもかかわらず、龍馬は事故相手紀州藩の無知や弱腰につけこみ、一方的に紀州藩側から法外な賠償金を手に入れる。坂本龍馬というと、爽やかな好青年に書かれた物語が多い中、この小説では、狡猾な詐欺師のような龍馬が登場する。2016/02/18
森香
3
いろは丸と坂本龍馬の話。金が無い龍馬が世間知らずの大洲藩と坊っちゃん育ちの紀州藩を喰い物にしていく。まさに不幸を呼ぶ船と人の生き血をすする男という感じだった。 方言アリ、語彙数も多く、私には難易度が高い文章だった。巻末の龍馬暗殺事件の検証が一番読みやすく、面白い。2015/05/27
japricot
1
江戸時代末期。いろは丸と龍馬の話。金のためには、相手の弱みにつけ込みがっつり自分のペースに持っていく。机上の戦か。 これまでもっていた龍馬の印象と全然違う。2016/12/23
sagatak
1
いろは丸の事件を中心に亀山社中時代の龍馬の行動を考察したもの。決して龍馬中心ではなく、周りの立場からも事件を再構成してあり、いままであった龍馬のイメージとはまったく違う龍馬が描かれる。そこにはツワモノの食えない龍馬がいる。しかしそれはよく考えてみれば分かる範囲のことであり、龍馬を批判している訳でもない。龍馬賛美もよろしいが、こんな見方のできる本も読むのは楽しい。あとがきにかえて、のところで龍馬暗殺について考察してあるところなど、著者のマニアックさがでていて面白い。2011/09/14