出版社内容情報
死後二ヵ月たったレーニンの遺体はいかにしてミイラ化されたか?親子二代、防腐処理にかかわった科学者が明かす異色のソ連裏面史
内容説明
レーニンが死去する直前から、スターリンはレーニンの遺体の永久保存を主張していた。民衆の宗教的感情を利用して政権の安定を図るのがその目的だった。問題は遺体の保存方法。冷凍保存か薬品による防腐処理か。遺体はすでに死後二カ月を経ていた…親子二代、レーニンの遺体保存にかかわった化学者が語る異色のソ連裏面史。
目次
第1章 レーニン死す
第2章 冷凍保存か薬剤処理か
第3章 父ボリス・ズバルスキー
第4章 少年時代
第5章 大学時代
第6章 レーニン廟で仕事を始める
第7章 粛清の嵐
第8章 遺体とともにシベリアへ
第9章 1945年、ベルリン
第10章 科学の世界も一党独裁
第11章 迫害の日々
第12章 国境を越える遺体保存チーム
第13章 ニュービジネス
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TATA
37
1924年1月、レーニン死去。そして遺体の処置を巡りスターリンとトロツキーの争いの後に防腐処置を行うことに。本書は父親とともに親子2代に渡ってレーニン廟付属研究所で防腐作業にあたった科学者の自伝。独ソ戦、恐怖政治による粛清、迫害と激動の時代を生き抜いた筆者、当時のソ連での生活がどのようなものであったかを伺い知れる貴重な作品。共産主義国が何を尊ぶかということを知れば自ずと今の国際社会の行く末も見えてくるように思います。2020/08/23
Willie the Wildcat
22
政争の具とされる生死の悲喜劇。世の中と人間の表裏が生々しく、ミイラ化の技術論の価値が色褪せる。著者自身矛盾を感じながらも、特権に身を委ねるのも時勢。無論、マフィアが顧客となる葬祭サービスも時勢の変化の顛末。但し、親子であっても常に”緊張”を齎す人間関係に将来性が見出せない。ヴォロビヨフ教授の”裏の顔”が、さほどショックでないのも当然。それにしても、レーニンの遺体の写真に見る遺体保存技術は唸るしかない。ロシアか、興味が尽きない国だ。過去トランジットの数時間滞在だけなので、一度はじっくり観光で堪能したい。2016/04/03
OKKO (o▽n)v 終活中
12
数十年前に読んだはずだってことを突然思い出して登録してみた。発掘できたらまた読む ◆しかし業が深い2020/02/25
うえ
5
「ドイツで接収してきた器具類のおかげで、私は細胞核研究の分野で大きな成果をあげる…抜き刷りを送ってほしいという依頼が世界中の研究者から寄せられた。だが…鉄のカーテンがすでに下ろされていた…どちらを向いても、聞こえてくるのはスターリンの「軍事的天才」と、「ロシアとロシア文化の優越性」の話だけという有様だった。…外国の研究者の論文を引用しただけで疑いの目を向けられ…科学上の重要な発見はすべてソ連の科学者の業績とされた。…戦争が終わったとき…私はこれで恐怖政治も少しは緩和されるのではと希望を持ったものだった。」2024/08/03
SAT(M)
5
レーニンの遺体の防腐処理とその後の保存に携わった生化学者父子を描いたノンフィクション。一学者がどうやってソ連体制下で生きてきたかという自伝的な内容です。そもそも、権力者のミイラを崇拝の対象とするというのが共産主義の元々の思想と逸れるんですが…。兎に角理不尽過ぎて面白い!学会でも国の思想に合わない学説をとなえる学者が粛清され、逆にトンデモ学説が闊歩していたという事実になお興味をそそられました。この手の本は後半が薄味になりがちですが、この本は最後の最後まで著者のアイロニーが詰め込まれていて面白かったです!2021/09/25