出版社内容情報
惚れ込んだ偉人・ゲーテの事績蒐集に向けて全精力をかたむける主人公。直木賞受賞作「ナポレオン狂」のモデルとなった人物の実像を活々て描いた著者初の長篇小説
内容説明
若くして「すべて独力でやる。いかなる事情あるも他から経済的援助は受けない―」と誓い、惚れ込んだ文豪の事績蒐集に全精力をそそぎこむ主人公。著者の直木賞受賞作『ナポレオン狂』のモデルとなった人物の半生を、軽妙な筆致で描き上げた“男の執念”の物語。短篇の名手が書いた初の長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
11
はじめての長編だったそうです。「ナポレオン狂」で直木賞を受賞していますが、そのモデルがいたそうで、その生涯を描いたがものがこの長編ドキュメンタリー小説といっていいのかもしれませんが、その主人公です。ほとんど登場する皆さんが実名で書かれています。その主人公の生涯は本当に小説より奇なり、という感じで私など一気に読んでしまいました。学者になるではなくゲーテに関するものすべてを集めてその博物館のようなものをつくってしまう、というエネルギーはどこから出てくるのでしょうか?2014/05/14
takaC
9
「ナポレオン狂」のモデルの人の話。ノンフィクションじゃなくてなんて言うんだっけこういう小説。1993/10/16
しんこい
7
ゲーテの本を収集した男、ナポレオン狂のモデルというが全然マニアの偏執狂的な感じはなく、むしろ物事を徹底するすごさでゲーテもビジネスも形にしてきたという印象です。集めた本がこの時代に戦災で焼失しなかったのが何たる幸運。渋谷に行ったらのぞいてみたい。2018/08/25
テツオ
4
ゲーテ図書館を作ることを人生の目標に立て、そのために青年時代に事業を起こし、実現させた粉川忠の実名小説。「ゲーテさん」と呼ばれたほど、ゲーテ作品の蒐集に人生をかけた粉川氏。代々村長の家系に生まれ、村を捨ててまで始めた事業は、なんと味噌こし器。成功する人物は、目のつけどころが違う。半日で読んでしまった。阿刀田高は読ませるなぁ。彼の出世作で直木賞を受賞した『ナポレオン狂』も粉川忠がモデルなんだとか。やはり、実名小説はおもしろい。2012/02/26
東森久利斗
2
おお、ぼくは生活に疲れました! 悲しみが歓喜(よろこび)が何でしょう こころよい平和よ訪れてこい ああ わが胸に訪れてこい!(「さすらい人の夜の歌」(「旅人の夜の歌」) 訳 星野慎一) ビブリオマニア/愛書狂のダークな異形の世界とは異なる、常識的な優等生、経済人として、ゲーテと仕事に命を懸けた愚直な人生。軽妙、ブラックユーモア、奇妙な味、阿刀田高な脚色も適度な塩梅。食わず嫌いなゲーテさん、シューベルトの歌曲集、ゲーテ詩集、格言集、若き…、ファウスト、…、どれから攻略しようか。2022/12/06