出版社内容情報
作・向田邦子、朗読・森繁久彌の名コンビによるラジオドラマの台本から選りすぐった71本を収録。向田邦子の原点ともいうべき脚本。
内容説明
この本は、作・向田邦子、朗読・森繁久彌の名コンビで2448回も続いたラジオエッセイの台本から選りすぐりを再編集したものである。森繁久彌が“手品”と絶賛した会話術と視点から、昭和の豊かな人間模様を甦らせた本書は、向田邦子の本格的デビュー作であり、後に名作と謳われる小説・エッセイの種が随所に鏤められた傑作である。
目次
1 重役の金婚式
2 重役またぎ
3 重役の休暇
4 重役の茶碗
5 重役の払い下げ物資
6 重役の上陸作戦
7 重役の動詞
著者等紹介
向田邦子[ムコウダクニコ]
昭和4(1929)年東京生まれ。実践女子専門学校国語科卒業。映画雑誌編集記者を経て放送作家になりラジオ・テレビで活躍。代表作に「だいこんの花」「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」等がある。55年に初めての短篇小説「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」で第83回直木賞を受賞し作家活動に入ったが、56年8月航空機事故で急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シブ吉
64
「向田邦子さんの本格的なデビュー作は、ラジオ番組のシナリオだった。」扉の言葉に魅せられてページをめくる。重役を主人公に展開する物語は、五分間の帯番組だっただけに小気味良い。森繁久彌さんの朗読に載せて語られたこのラジオエッセイは、昭和の懐かしい香りを漂わせ、今から五十年程前の古き良き時代の日本の会社に思いを馳せる。森繁さんと向田邦子さんがお互いについて語った言葉もとても素晴らしく、中でも、不慮の事故で旅立った向田さんの三周忌に、お墓に彫る墓碑銘を依頼された森繁さんの、その記した言葉の温もりに酔いました。2013/12/15
もりくに
33
ネット書店も便利だが、本が並んでいるのを見るのが好きだ。それは貧弱な自分の「本棚」でも。ボーと見ていると、目の隅をちらっとかすめる本がある。今回はこの本。「遅読」自慢だから、読みたい本や読まねばいけない本が「山積み」。毎日ダラダラしていて、読書が唯一の「お仕事」の身には、なんとなくリラックスした気持ちで読める。この台本は、フンドシかつぎ(向田 言)の脚本家が、横綱の森繁久彌さんを相手の2448回の「ぶっつかり稽古」。「以前、オンエアしたのと同じ趣旨じゃないか」と森繁さん。「それでいいのよ。」と向田さん。2018/10/22
おさむ
30
重役という言葉、最近はあまり使わなくなりました。昭和に社長シリーズで、一時代を博した森繁久彌さんのキャラクターを上手くいかしたラジオエッセイ集。普通の人の暮らしのなかから人間のもつ情けなさ、弱さを取り出して、好意的に料理する。向田文学の初期のエッセンスが詰まっています。2015/09/06
ぐうぐう
19
おもしろい! これが、向田邦子の実質的なデビュー作だと言うのだから、恐れ入る。人気シナリオライターになる前の、若さゆえの軽さが心地いい。それでいて、年齢を感じさせない、味わい深さが染み入る。何よりも、そのバリエーションの豊かさに驚かされる。5分間のラジオ番組を、2500回近くも続け、そのクオリティに波がないということが、すごい。デビュー時に、こんなタフな経験をしているのだもの、のちの彼女の活躍は、当然だとも言える。2012/06/27
駄目男
14
私が向田邦子を知ったのはかなり遅かった。『寺内貫太郎一家』はよく見ていたが、それすら向田の原作とは露知らず、『思い出トランプ』が直木賞を受賞するに至って、やっと存在をしったほどだ。本作品は昭和37年3月から昭和44年12月まで、日曜を除く毎朝五分間放送された森繁久彌朗読による連続ラジオエッセイで、2448回も続いたという。大変な数には違いないが、こういうものは、やはり抑揚をつけた名話術で名高い森繁さんの話で聞かないと味わいが出ないと思う。平文で読んでいても面白味は伝わらなかった。2024/01/31