出版社内容情報
エリート家庭からおちこぼれた青年が、ふとしたことから知った家族の実態。仮面家庭の崩壊と肉親愛を描いた名作ドラマの小説化
内容説明
高校時代の万引事件のためエリート家庭から落ちこぼれた菊男は、ガード下の靴修理店の老夫婦のもとに入りびたっていた。そんなある日、ふとしたきっかけから、菊男は謹厳な祖父や、一流ビジネスマンの父のもうひとつの姿を知ってしまう。人間の本質と家族のあり方を追求して話題を呼んだ名作ドラマの小説化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
凛雪
66
初よみの作家さん。この方の文章に込められた不思議な力は一体何なのだろう⁇冒頭からまるでドラマを観ているような感覚に陥り、脳内で映像として流れていくようにスラスラと読み終えました。自分にとって居心地のよい「存在」や「場所」、「家族」とは一体何なのか‥。それぞれが胸に秘められた枯れた心を抱いてただその一瞬の「幸せ」を求めて人生を奔走していく季節外れの運動会‥。その長い長い冬の運動会のゴールの先にはきっと暖かい春が待っていてくれるだろう‥。2014/05/09
優希
53
人の本性と家族について描いた名作だと思います。バラバラになりそうな家族をあり方を考えさせられました。2021/05/10
nemuro
46
向田邦子が面白い。ずっと気になってはいたようで、本棚には、『思い出トランプ』(2018年3月/GEO富良野店)、『無名仮名人名簿』(2021年11月/GEO滝川東町店)、妹・和子氏による『向田邦子の恋文』(2008年1月/根室市・伊沢書店)と、未読の3冊。『海苔と卵と朝めし』(本年1月読了)に続き2冊目。ドラマ(TBS系1977年1月~全10回)の記憶はないが、加代役:藤田弓子氏の「解説」に志村喬・木村功・加藤治子・大滝秀治・赤木春恵・市原悦子・根津甚八・いしだあゆみの名前が出てきて、あまりの適役に吃驚。2025/03/22
乱読亭AKIRA@晴釣雨読🎣
40
再読。何気ない家族ドラマから家族の在り方について深く考えさせられる作品。向田邦子の脚本を別の作家が小説化したとのことで、脚本が原作なだけに、ほとんどの文章が会話となってます。その会話のやりとりが、いかにも昭和な感じが出ていて、読んでいて落ち着きました。昭和を知らない私のような世代の人に特に読んで欲しい一冊です。最後の「お互いに見せ合った恥の分だけ、いたわりと温かみが生まれたんじゃあないか。」の一文に家族の在り方の本質が詰め込まれてると思いました。2021/09/07
ken_sakura
35
とても良かった♪( ´▽`)解説より、テレビドラマは黒澤映画の常連、志村喬、木村功。新劇界の大御所、加藤治子、大滝秀治、赤木春恵、市村悦子。新米はいしだあゆみ、根津甚八、藤田弓子。リハーサルの初日、皆が静かに年若い向田邦子の脚本を待つ。届いた脚本のコピーを皆が読んで沈黙、志村喬が唸り、加藤治子が息をつく、木村功が「すごいね」とぽつり。その日その後のリハーサルは皆生彩無し、とのこと。打ちのめされる気がする行間。鞘のある良く切れる刃物みたいな物語。鞘の無い良く切れる刃物みたいな有吉佐和子の物語を思い出す2019/02/17