出版社内容情報
倫理感が強く自由にこがれる知的青年が、悲しいまでに自己の姿をみつめつつ旅の空をさまよう自伝的青春文学の傑作。写真多数収録
内容説明
ぼくは今、何をなすべきか。東京五輪を目前に控えた喧騒の社会にほうり出された倫理的で屈強な肉体をもった知的青年は、何ものをも見つけられぬまま日本を、そしてヨーロッパを彷徨う。暗闇の中にさした一条の光、それは何と一隻のカヌーだった!青春の懊悩を鋭くみつめた、自伝的エッセイの隠された傑作。写真収録多数。
目次
1964年、夏、北海道。
新聞配達とヒッチハイク
京都御所のフリスビー
風に吹かれて
一人ぼっちの冬
単純粗暴犯
さらば、日本
フィンランドの夏
白夜とムンクの絵
流浪のハムレット〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
saga
56
【古書】『北の川から』で語られたとおり、自身の漂泊の人生を綴る。大学を卒業し、苦心して渡航費を貯め、ユーラシア大陸をソ連を皮切りに北欧~南欧まで、ヒッチハイクと鉄道を使って流浪。今で言う自分探しの旅だったのだろう。スウェーデンで自由なカヌーの乗り方に接し、フランスで川下りの楽しさに出会った。29歳で結婚するも、本書を読む限りでは、妻も著者も幸せな結婚生活ではなかったように見える。著書が評価されたのが44歳という、遅咲きの人生だったんだな~2022/07/09
goro@80.7
55
自由になりたいと苦悩する青年。日本を飛び出しヨーロッパを巡っても分からず、教師になったり雑誌社に勤めてもぽっかりとあいた穴は埋まらない。どんな生き方をしたっていいじゃないかと過去をさらしてさらけ出す。もうこの先あと何年という年になっては後悔ばかりの日々。野田さんが居てくれたから残してくれたものをまた読める。若い人に読んで欲しい、爺になる前に読んで欲しい一冊です。合掌。2022/04/06
これでいいのだ@ヘタレ女王
35
1960年代半ば、1ドルが360円の時代に束縛されるのが苦手で日本が窮屈だった 著者が自分の生き方について 迷い 葛藤しながら国内外を放浪した20代から30代の まさに放浪記。椎名誠や沢野ひとしと怪しい探検隊をしたり、カヌー犬ガクと ユーコンの川下りを愉しんでいたのは知っていたが まさか小渕元首相と 文学部仲間だったとは知らなかった。〔それには一行しか触れていないけど〕開高健 に似た感じ だが もっと格好をつけてなくて 惹かれる2016/03/27
shishi
15
[A]著者が20代だった頃の回想エッセイ。彼が綴る文章では「まともに生きろ」と青年を諭す大人への反抗心が甘いノスタルジアよりも輝く。年をとった彼の中に、青年だった頃の彼が、そのままに生きている。生き方を求め、息苦しく悶々と暗中模索した日々、手がかりを求めて出た欧州への旅。今の時代に照らし合わせて読むと、野性味に満ちた旅のように思えるが、きっとぼくたちが大人しいのだ。いまを生きる若者は、もっと熱く主張し、正面から社会にぶつかっていくべきなんじゃないか。収まりのよい「良い子」なんて絶対につまらないよ。2012/04/09
Kajitt22
12
飾らない文章で著者の青春の悩みがつづられるが、写真にある通り、鍛えた肉体と行動派の精神により、その情景はカラッとしていてさわやかだ。絶望的に生き方が下手である、と書かれているが、この人は頑固で人一倍純粋なのだろう。文中に出てくる『ヨーロッパ一日5ドルの旅』は私も手に取って憧れた覚えがある。私の旅は一日5ドルではなかったが、ギリシャでの、石鹸のようなチーズがオリーブオイルに浮かんだサラダを思い出した。ひとごとながら、著者がカヌーに出会えてよかったと思う。2015/09/22