出版社内容情報
朝鮮植民地の二世としてソウルに生まれた著者が「近くて遠い国」といわれる隣国“朝鮮”についてなぜに遠いのかを実感的に考察した私小説的なユニークな朝鮮論!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
CTC
10
84年文春文庫、74年単行本初版、現在は重版未定状態のよう。 本田靖春氏の金嬉老をテーマにした著作『私戦』に強い衝撃を受けたのは何年前だったか。金嬉老が生まれながらに戦った差別や周囲の無理解、事を理解するために著者が費やした調べの細やかさ、は今も心に残る。さて本書、タイトルから氏には半島の血が?とも思った訳だが…さにあらず。1933年京城生まれ、韓国人の子守に背負われ育ち、特別な差別感情は持たなかった。しかし純然とそこにあった違いや優越的感情。氏は「自らの深奥にわだかまるもの」を確かめ抉り出そうとする。2016/10/31
しんこい
6
韓流ブームはるか以前、昭和40年代の日本と韓国の関係って、ここにあるようにお互い嫌いというか無視というかそんな感じで、なんでも重たい会話にしかならなかった気がします。故郷と思ってソウルに行って探していたのは実は昔の日本だったという下りが、なるほどと思いました。戦争後引き上げた日本では、日本人が荷物運びをしていて衝撃を受けたというギャップも。2014/05/18
Hiroki Nishizumi
3
私のなか、というより戦後当時の在日コリアンの置かれた状況や日本の空気を回顧した本。結局朝鮮半島経営は双方の国に不幸をもたらした気がする。しかし二十世紀に入ってすぐに、それ以外の良策があったのか否か。なかなか難しい。2020/05/13