内容説明
鮑叔は斉国の公子小白の傅となり、管仲はその兄弟・公子糾の家宰となった。君主の座をめぐる争いで、二人は戦場で敵同士となる。追いつめられた管仲の放った一矢は虚空を横切り、小白の腹部に刺さった…。新しい時代の霸者が生まれるまでのドラマを、鋭い人物描写と為政への洞察で読ませる渾身の長編。
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20(1945)年、蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事、創作をはじめる。その後帰郷、ながい空白ののち「王家の風日」を完成。平成3年、「天空の舟」で新田次郎文学賞、「夏姫春秋」で直木賞、「重耳」で平成5年度芸術選奨文部大臣賞、「子産」で平成13年の吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
105
中国の春秋戦国時代の最初の覇者桓公に仕え、後に有名な宰相となる管仲・・斉の君主をめぐる争いで敵方についた管仲を推挙したのは鮑叔であり、鮑叔はその後身を引くという日本人好みの逸話を落ち着いて描いている。ただ、宮城谷昌光が描く世界は静溢すぎて最近物足りなくなってきているのも事実。2011/05/14
すしな
42
010-25.斉の国のお家騒動で、菅仲と鮑叔それぞれ別の公子を擁立し、菅仲が殺し損ねた、鮑叔が推している公子が斉王になるわけですけど、鮑叔は斉王を諭して菅仲を宰相に取り立ててもらいます。そこから先の鮑叔は一線から身を引く形になるのですが、鮑叔は1ミリも得なことがないのによくそこまでできるなという展開でした。その後の管仲の活躍は目覚ましく、減税したり、重農、重商政策で民間に財が回るようにして、斉の発展に貢献したということで、日本も見習って減税してくれないかな〜と思ってしまいました。2025/02/04
akira
31
管仲下巻。 これも非常に面白かった。管仲と鮑叔、互いに認め合いながらも全く逆とも言える人生を歩むその対局的な描き方が一層物語を面白くする。 印象に残る言葉。人が人を「ゆるす」ということ。一度は矢を放たれた相手である管仲を宥した桓公。そしてそれを介添えした鮑叔。人間、感情でゆるせないことは多いのだが、それで大きく失うものも多い。この三人が揃って歴史に名を残しているのも興味深い。宮城谷作品、これからも楽しみだ。 「もしも君がお宥しになり、かれをお招きになれば、やはり彼は君のために同じように働くでしょう」2021/12/23
姉勤
27
「管鮑の交り」の管仲の親友と言える、主人公ではない鮑叔の見事さの方に光が当たりすぎた感(意図的なものも感じる)。後の斉桓公となる公子の兄に仕えた管仲は、忠義のため桓公に矢を放ち、当てる。しかし、時勢にも知恵比べにも敗れた管仲は桓公に命を預けるが、鮑叔の助命と桓公の寛容に救われ、その後は命を賭して斉国を盛り立て春秋時代の大国への基盤を確固たるものにする。古代という文献も乏しい人物を物語として仕上げる著者の本領と苦労。善人賛歌としてまとめなくては骨格すら出来上がらない。時代を超えた人間を描きたい一心を感じる。2022/02/25
たみ
23
春秋時代の斉の宰相:管仲の、主に宰相におさまるまでを小説にしたもの。管仲と鮑叔、2人はプリキュアじゃなくて友達。互いにこいつには負けると認め合う仲。しかし公子小白側の鮑叔と、公子糾側の管仲は争うことになってアワワワ。管仲もすごい御人でしたが、その友人である鮑叔と、彼らの主君となる垣公の懐が深い深い。特に鮑叔は器が大きすぎて人間に見えず逆に怖いくらいでしたナンダあの人。モノクロの中にポツリポツリと浮かび上がるように描かれる女性達の色鮮やかさ。文姜さんの心中やいかに。漢字のフリガナもっと増やしてほしいの…2016/01/22