内容説明
妻子を得て春陰にたたずむ望の胸中には、焦燥あるばかりであった。周公を中心に諸侯は策謀しつつある。しかし独り時代の先を視る望の苛烈な生は、人知れぬ哀しみにみちていた。ひとは己れを超えねばならぬ、あたかも小魚が虹桟を渡り竜と化するように。利に争うものは敗れ、怨みに争うものは勝つ、そしてそれを超えるとは。
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20(1945)年、蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事、創作をはじめる。その後帰郷、ながい空白ののち「王家の風日」を完成。平成3年、「天空の舟」で新田次郎文学賞、「夏姫春秋」で直木賞、「重耳」で平成5年度芸術選奨文部大臣賞、「子産」で平成13年度吉川英治文学賞を受賞。著書に「孟夏の太陽」「沈黙の王」「侠骨記」「春の潮」「花の歳月」「晏子」「介子推」「孟嘗君」「長城のかげ」「玉人」「楽毅」等の小説、エッセイ集「春秋の色」「歴史の活力」「春秋の名君」等がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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歴史時々サスペンス本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
63
中巻ではいまだ望の望みはいまだ実現の機運も見せずにいます。めとった妻も亡くなってしまいます。商王朝の王は酒池肉林といった言葉の通りに悪辣に描かれています。宮城谷さんはそこらへんを描くのがうまく、またさまざまな警句の様な言葉も主人公の胸の内という感じで入れてくれるので参考になります。2015/05/16
アルピニア
50
受王の搾取(労働力の提供と貢ぎ物)が増す中、反商国の諸侯、諸族の気持ちが次第にまとまっていく。望が着々と備えをはじめる。戦いを好まず平等の精神で遊牧民として暮らす羌族に主義を守る為の変革を促す。望は既に戦いの先を見ている。商王との戦いは、神性との戦い。王の神性から人々を解放することが重要であると。皆は望に神性を感じているが、望は神の守護に頼らず理性で進もうとする。その葛藤が読みごたえがある。4頭立ての兵車を作り、占いではなく戦法に沿って進軍し、巨大な商軍に挑む。いよいよ闘いがはじまる。2017/12/21
著者の生き様を学ぶ庵さん
37
恭賀新年。新春初読みなり。望は一男一女を授かるも、愛妻・逢青は急逝す。紂王は未だ妲己に惑はされず。妲己は有蘇氏・蘇忿生が娘にして、未だ傾国の美女「妲己」に進化せず。如何にして所謂「妲己」に変化せるか、怖いもの見たさなり。2016/01/01
れもん
30
図書館本。再読。受王への復讐のために、少しずつ力をつけ、仲間を増やしていく望。バラバラになってしまった、かつての仲間たちと再会する度にウルッとした。ビックリしたのは、妲己。悪女のイメージが強かったけど、こんなにしおらしい感じだったっけ?望も妲己に好感を抱いてるし。。いよいよ、商王朝を終わらせる時が来る。下巻が楽しみ。2025/04/20
たみ
22
二十代の望、妻を亡くし子を残して去り賈人となる。商の受王へ謀反をたくらむ人の話を聞いたり拠点作りと情報交換と人脈作り、羌族が生き延びられる方法を模索する。仲間のおでこを指でチョンと押してみたり「あの女性を〇〇(仲間の1人)の妻にどうかなぁ」と言ったりする望、相手の仲間に(エッあの女性はあなたが好きですヨどう見ても…(;・`д・´))みたいに思われていて愛嬌を感じます。仲間の結束が固い。後宮で不遇を強いられている妲己愛くるしい、望が惚れるのも無理ないなぁと…。…。…惚れ!? 彪も気になるし、下巻へ急ぐ!2016/03/07