出版社内容情報
晋王重耳の臣趙衰の子趙盾は、やがて王と対立するようになる。春秋時代を生き抜いた趙一族の盛衰と時代の流れを捉えた古代叙事詩
内容説明
中国春秋時代の大国晋の名君重耳に仕えた趙衰の子趙盾は、父同様晋の宰相となるが、自らが王に推戴した夷皐と対立せざるを得なくなる。王とは何か臣とは何か、義とは何か信とは何か。宰相として国を支え続け、歴史とかかわってゆく趙一族の思想と盛衰を、透徹した史眼と清冽な筆致で描いた長篇歴史ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
115
複雑な中国の春秋時代の歴史を、趙氏一族の生き様を通して描く連作集。人物同士のぶつかり合いを中心にして物語が進んでいくので、歴史のダイナミックなうねりを実感できた。ここで描かれている趙氏の面々は、欠点はあっても信義に厚い人物ばかりで、生きていく上で本当に大切なことは何か、ということを読者に考えさせる。耐え抜く人生を送った無恤を描く最終話の「隼の城」が一番の好みだった。2015/02/20
遥かなる想い
85
春秋戦国時代の趙一族の何代にもわたる苦闘の歴史。趙一族の家系図をメモにはさんで読んでいた。宮城谷昌光はどうやってこの時代の史実を蘇らせていくのだろうと舌をまく思いで読んでいた。特に無恤が知伯のあざけりも耐え忍び、復活していくシーンの筆力は秀逸である。2010/06/12
ふじさん
60
再読。4つの短編小説の形式になっているが、これは晋の重耳(文公)に仕えた趙衰の息子である趙盾の成長から始まる、趙氏一族の盛衰記である。それぞれの時代を生きた趙氏の生の軌跡を中心に、身辺の家人、あるいは仇敵等を周縁に配置して、各編構成されており、春秋時代を描いた大作と呼べる作品だ。雄大な歴史ロマンに浸ることができる作品でもある。「重耳」への序章となる作品だ。 2020/10/28
崩紫サロメ
35
春秋時代、晋の宰相趙氏7代、約200年間を扱った短編集。著者の初期の作で、後の長編『重耳』や『沙中の回廊』などに登場する人物も登場する。「孟夏の太陽」「月下の彦士」「老桃残記」「隼の城」1話ずつが秀逸な短編であるが、やはり一連の長編として読むべきだろう。「夏日の日」(孟夏の太陽)に喩えられた趙盾に始まり、その裔の無恤(趙襄子)の時代に趙・韓・魏が独立するに至るが、無恤が見る光景は雪の晋陽であり、雪上に走る一筋の夕日であり、鳥の飛ばぬ空である。戦国の大国の始まりの描写でありながら、寂寞とした余韻がある。2021/06/22
キジネコ
35
伝説の血統の物語が晋の流浪の王重耳との忍従の旅から始まります。趙氏嬴衰・盾・朔・武・成・鞅・無恤の7代に渡る時の流れ、摩滅される様な危難試練を乗り越え、再び一国の主催者となる一族。後に嬴政を生み出す血脈の盛衰を見守ったのは人の知恵であり育まれた度量であり、計り知れぬ天の意思でした。蒙昧なキジの未熟を読むたびに知らされます。今回は、器量の無限について教えられました。欲の相貌が強に染まれば己を失い続ける、広大無辺の無我を胸に宿せば永遠が見えると書は諭します。許すこと、認めること、感謝することから始めよと・・・2016/02/19
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