出版社内容情報
昭和初年の日本のアナーキスト・テロリストを見事に位置づけた著者の代表作。我々人間の胸底に潜む永遠のカオス、アナーキズムへの郷愁をかきたてる記念碑的作品
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- 評価
BOOK-lin’本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
43
初高見順。図書館本。Amazon中古でずいぶんと高価なので。昭和初期のアナーキスト・テロリストの主人公視点の小説。不穏極まりない戦前日本と中国を舞台にしている。自暴自棄な彼を、利用しようとする連中とそれに乗る彼。そんな彼はようやく生活者としてささやかな日々を過ごすのだが、病魔と時代がそんな彼を放っておくこともなく…… 正直、小説としては強くおすすめできないが、いろいろおもしろい。2016/01/11
sabosashi
8
今ではあまり読まれなくなってしまったが高見順はかなり存在感のある作家であった。その当時の社会といったものに意識的にかかわってきた。つまり時代に向かって自分をさらけ出してきたといえる。文学史的にいえば左翼くずれ、または転向組ともみなされ、その饒舌性は太宰治を想起させてもいいかもしれない。しかし今わたしが考えたいのは川端康成との比較で、川端が美学、または滅びの美といったものを追い、結果としてきわめて時代を超えたものと化した一方、高見は描こうとするものにあまりにも接近しすぎたために、後世への読者を減らしたと言え2013/12/15
Mark.jr
5
死にぞこなったテロリスト、アナーキストくずれの物語。しかも軟派でなく、かなり硬派なタイプなのが余計やり場のない鬱憤を感じます。もはや歴史小説と言ってもいいぐらいに、作中の風俗や男女描写は古びつつありますが、だからこそ込められているエモーションがせり出してくるかのようです。もしかしたら、ある意味日本最古のパンク文学の一つかも。2023/03/24
フクシマ
5
感想長いんでブログに書いてます。よかったら、読んでください。 http://blog.livedoor.jp/fukushima1978/archives/68220394.html2014/09/25
Melody_Nelson
4
BRUTUSの「危険な読書」で紹介されて、読みたくなった。いきなり私娼窟から始まり、隠語のオンパレード。昭和初期に蠢く、アナーキスト、ボルシェビキ、右翼などの活動家たち。彼らの描写だけでなく話の展開も含め、とにかく圧倒されるのだが、四郎の、自暴自棄ともいえる行動や、虚無感に襲われるところ等、胸に迫ってくる。軍部が力を増し、閉塞感が強くなる中、四郎は何かに突き動かされるというより、焦燥感に駆られているように行動するが、その心象の描き方が心に残る。ところで、これは「危険」な本かなぁ?傑作だとは思ったけど。2017/02/12