出版社内容情報
オキナワの現実を少年の曇りない眼でとらえて共感をよんだ芥川賞受賞作品「オキナワの少年」。他に、都市の底辺をさまようオキナワ少年の孤独と憧憬を綴る長篇「ちゅらかあぎ」。解説・北澤三保
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
250
オキナワを舞台にした小説だが、この時期にこの作品が芥川賞の対象になったことは、アメリカの占領下にあった沖縄が日本復帰を目前にしていたことと関わるだろう。同時受賞した、李恢成 「砧をうつ女」とともに、戦後を終わらせるといった意識が選考委員たちの中に強く働いていたことが窺えるのである。小説は沖縄方言がちりばめられているとともに、往々にして文章に飛躍があり分かりにくい。それは小説の難解さではなく、伝達技術によるものだ。一方、オキナワが依然として占領下にあったことは随所に感じられ、声高な主張よりも伝わるだろう。 2015/10/08
遥かなる想い
182
第66回(1971年)芥川賞。 沖縄の方言満載の作品で、返還目前の 日本の雰囲気が醸し出されている本である。 新聞配達をして家計を助ける少年つねよし君の 視線は、何かを諦めたようでもある。 文体はあくまで軽快だが、 背景にあるアメリカの影がチラリと 見え隠れする物語だった。 2017/09/09
absinthe
134
戦後。アメリカ統治下のオキナワで思春期を過ごした少年の話。芥川賞作品は性について書く話が多いなぁ等と思った時期があった。親が性風俗店を経営している。そのことを嫌悪しながら生活している。セリフに方言がきつ過ぎて良く判らないところもあったのだが。まぁこの年齢の少年も色々考えるよね。大人ぶって理性を振り回さない分、この年代固有の素直な視線が伝わってくる。2023/07/27
kaizen@名古屋de朝活読書会
80
【芥川賞】題材は沖縄。沖縄らしさをどこに求める。つねよし と おっかあ。コザ小学校。風、海、島、台風。解説・北澤三保2014/02/19
hit4papa
61
タイトル作「オキナワの少年」は、米兵相手に性風俗店を営む家の少年から見た、戦後の沖縄の姿が描かれます。ドルで買い物をし、パスポートが必要だった頃で、少年の性の目覚めを含めくらい閉塞感が漂います。「島でのさようなら」、「ちゅらかあぎ」は、トルストイに熱中するモラトリアムな高校中退者が、集団就職で上京し、怠惰とも言える生活を送る私小説風の作品。著者の人生そのもののようで、嫌悪しながらも、琴線に触れる部分もありと、複雑な感情を覚えてしまいました。「ちゅらかあぎ」は美しい影。作品の底辺感と真逆ですわ。【芥川賞】2022/03/22