内容説明
治安維持法下に非命の死を遂げた川柳人、鶴彬とその足跡を辿ることに半生を賭けた男の執念。松川裁判に奔走した作家、広津和郎の私生活の修羅。シベリアに八年間抑留された鹿野武一がラーゲリから妻に書き送った手紙。―有名無名の九人の男と女が紡いだ必死の生とその果ての様々な死から昭和の闇を解く。
目次
治安維持法下の愛と死
「父いづこ」という環
反戦川柳作家、鶴彬
「太田伍長の陣中手記」以後
アッツ島玉砕者のたより
占領下の花、鈴木しづ子
広津和郎、男としての誠実
山村農家の母の自死
シベリア抑留八年夫と妻
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
19
人が織り成す”生”。運命でもあり、縁でもある。親子、夫婦の情愛は不変。無念さと願いを想い、継ぐ。背負う責任を感じる。特に、農婦・木村氏とシベリア抑留・鹿野氏が印象に残る。どちらも、自身へ課した厳しさは、”生”への義務と責任の強さと感じる。一方、アッツ島・矢敷氏の子への願い。喜一氏のその後の人生の心の支えであったと願いたい。2014/04/16
south-pow
0
木村センのエピソードが鮮烈だった。【母の歴史はなにを語るのか。余計者になってしまったら消えたいという働き者の悲しい祈り。その祈りを無用と言いきれる日があったのか。】2008/11/29