内容説明
1970年代の南米チリ。史上初の選挙による社会主義政権が一夜にして誕生し、急激な改革を推し進める政権党と、中産階級の利権を守り、旧体制に復帰しようとする野党・軍部との暗闘が始まった。その両者に接近し、苛酷な商戦を繰り広げた日本の二つの商社があった。「革命」ですら商売にすべく奮闘する商社マンたちの生き様とは。
著者等紹介
深田祐介[フカダユウスケ]
1931(昭和6)年、東京生れ。暁星高校を経て、55年早稲田大学卒業。日本航空に入社し、海外駐在員、広報室次長を歴任。83年退社し、作家活動に専念。76年「新西洋事情」で大宅壮一ノンフィクション賞、82年「炎熱商人」で直木賞を受賞。87年文芸春秋読者賞を受賞した「新東洋事情」以来、アジア情勢・分析において、読者の絶大なる信頼を集める。著書に「暗闇商人」「激震東洋事情」「美食は人にあり」「鍵は『台湾』にあり!」(共著)など多数
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感想・レビュー
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まつうら
25
太平洋の反対側にある鉱山とワインの国。チリはこんなイメージだったが、アジェンデ政権前後の激動の時代には、この国にアツい商社マンたちがいた! 主人公の岸田は陸軍向けの自動車ビジネスを盛り上げるが、旧日本軍を知る上司の平川は軍相手の取引を躊躇する。しかしチリ陸軍は統制のきいた立派な軍隊で、ルーズだった旧日本軍とは比ぶべくもない。やがてアジェンデが大統領になると、社会主義政権を排したいアメリカが内政干渉をチリ陸軍に仕掛けてくる。しかしチリ陸軍は政治的中立が伝統で、アメリカの工作には屈しない。とても頼もしい!2022/05/25
makimakimasa
5
1970年に世界で初めて自由選挙により選出された社会主義政権という、実際の現代史を舞台としたストーリー。駐在員と現地採用の人間関係、太平洋戦争の記憶、現地女性との恋愛模様など、直木賞作品『炎熱商人』の舞台設定だけフィリピンからチリに変えた様な内容だが、本作も非常に読み応えのある面白さ。色んな要素が詰まっていて、単なるビジネス小説とは一線を画す。今回の商材は銅や車両である。三菱商事は岩崎商事と名を変えているが、トヨタなどは普通に固有名詞で登場。大阪訛りのスペイン語が物語に小気味良さを加えている気がする。2016/12/16
shizzy
3
友人に貰った本。以前著者のエッセイを読んで共感が出来なかった部分があり、それ以来手に取ってみる機会はありませんでした。期待せずに読み始めたけど、これはとても読み応えがありました。半世紀前に起きたアジェンデ政権誕生前の動乱のチリでの日本人商社員の生活が生き生きと描かれており、古い本という印象が吹き飛ぶほど面白い印象で上巻終了。2014/07/29
el_desvios
1
どちらかというとこの時の話題といえばピノチェトの弾圧のことが多いが、その前段のアジェンデの振る舞いを、どこまで本当かはわからないけど、こんなに臨場感を持って書いているとは思わなかった。とても面白かった。2025/02/05
高松権造
1
黄ばんだ文庫が長く本棚にあったので、家ごもりで読んでみた。チリで1970年代に誕生した社会主義のアジェンデ政権の動乱下で、日本人商社マンたちが奔走する姿を描く。選挙で社会主義政権が成立したことがあったことを初めて知った。その混乱と、日本の高度成長期がオーバーラップして、不思議な熱気と高揚を感じた。2020/05/08