出版社内容情報
三十年前の痛ましい事件。被害者の少女に恋心を抱いていた少年が胸に秘めていた事件の真相は、誰もが予想しえないものだった!
内容説明
名医として町の尊敬を集めるベンだが、今まで暗い記憶を胸に秘めてきた。それは30年前に起こったある痛ましい事件に関することだ。犠牲者となった美しい少女ケリーをもっとも身近に見てきたベンが、ほろ苦い初恋の回想と共にたどりついた事件の真相は、誰もが予想しえないものだった!ミステリの枠を超えて迫る犯罪小説の傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
124
「これは私の記憶にある中で最も暗い話である」いやもう、この冒頭の一文が全て…アメリカ南部ハイスクールでの淡い恋愛を痛々しくもピュアに読ませながら、それ故に生じた憤りが導く衝撃の結末は哀しくて切なくて…30年前と現在を唐突に行って帰っての展開は必ずしも分かりやすくはない。はたして序盤で目にする悲劇を引き起こしたのは憎しみ、あるいは愛情なのか!?その謳い文句通り、たった一言が全ての人生を変えてしまう…素直な悪意に溢れた思惑と多く語られていた話題と重なるのが痛過ぎる…でも驚愕の出逢いはちょっと興醒めだったけど…2021/09/21
遥かなる想い
123
「これは私の記憶にある中で最も暗い話である」で始まるこの本は 終始心に痛く哀しい物語である。一人称で回顧する形式は『緋色の記憶』と同じで断片的な事実がフラッシュバックのように甦り、隠されていた真実が繋がっていく「わたしの人生はどこで狂いはじめたの?なぜこんな目に遭わなくてはならないの」という独白が効果的に次への章へ繋げていって…頁を捲るのももどかしい程の気持ちにさせてさせてくれる。クックが描くヒロインはとても印象的で強い。全編にたち込める霧のようなものの中に原色に近い灯を点しているような物語になっている2010/05/16
yumiko
62
冒頭からがっしりと掴まれる。クックの語りの巧さにはいつもほれぼれ。1962年アラバマ州の静かな街で美しい少女ケリーの身に起こった悲惨な事件。それが多くの人の人生を狂わせ、30年以上経った今も苦しめ続けているのは何故なのか…?狂おしいまでの恋情は、それが初恋であればこそ、少年に残酷な仕打ちをけしかける。「緋色の記憶」にも通じる、取り返しのつかないある一言が引き起こす悲劇。アメリカが抱える人種問題の根深さをも突きつけられる真相は、ただただ苦しくやりきれない。記憶三部作の中でも特に重い読後感を残す一冊。2016/09/02
キムチ
52
ブレイク・ハート・ヒル(心臓破りの丘・・奴隷市場の余興の場でもあった)で起こった事件を語り始めるベン。ちっちゃな町の高校の同級生ルーク、ライル、トッド。ケリーが襲われた事件の深層はクックの手になると沼底のような冥い記憶だった。とは言え、人種差別の感覚と愛すること愛されることの難しさに絶望感も抱く。そして誰しもある青春時代特有の浅はかな判断力とベンの滑稽なまでの残虐性に嫌悪すら抱く。時に真実なのか、妄想なのか、心理を追体験しているようなベンに自己弁護の疎ましさも。心理描写の絶望的冴えに凄みすら覚える。2015/09/19
jima
26
現在と過去を交差させながら進む話に、なかなかついて行かれず、前半は読むのをやめようか迷った。一つの事件を巡り、個人の思考、体験、過去が徹底的に明らかにされ、結末、犯人を読者にチラチラ見せていく。すごいぞ!の読後感。道尾さんが「プロムナード」で愛する本格ミステリーと紹介するだけ中身の濃い作品だった。2014/05/19