文春文庫<br> 緋色の記憶

文春文庫
緋色の記憶

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  • サイズ 文庫判/ページ数 398p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167218409
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

出版社内容情報

ニューイングランドの小さな町にある日、美しい女教師がやってきた──七十年近く前の"チャタム校事件"の真実を今彼は回想する

内容説明

ある夏、コッド岬の小さな村のバス停に、緋色のブラウスを着たひとりの女性が降り立った―そこから悲劇は始まった。美しい新任教師が同僚を愛してしまったことからやがて起こる“チャタム校事件”。老弁護士が幼き日々への懐旧をこめて回想する恐ろしい冬の真相とは?精緻な美しさで語られる1997年度MWA最優秀長編賞受賞作。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

406
主人公のヘンリーが老境に至って後に少年時の事件を回想する構成をとる。当然、彼は全てを(その時に明かされなかった事実をも含めて)知っているのであるが、回想であるためにいたって恣意的に語られることになる。したがって読者にはなかなか事件の全貌が明らかになってこない。その点にいささかのフラストレーションを抱えながら読み進めることになる。しかも、(おそらくは)多くの読者の予想は裏切られることになる。そして、そこにこそ本編の構成の妙があったのである。暗いトーンが全体を覆い地味なのだが、真に個性的な味わい深い小説。2020/10/13

サム・ミイラ

137
再読。十数年前入院の際に暇潰しに売店で購入したのがこれ。全く知らぬ作家。海外のミステリはかなり読んだつもりだがこれは衝撃だった。ノスタルジックで普通。そこがすごい。少年の頃の学校での事件を回想するだけなのに誰にも言えず心の片隅に閉じ込めた記憶がじわり顔を覗かせる。一枚ずつ薄皮を剥ぐような静謐な文章が読む者をその時代へと誘う。特筆すべきはラストの美しさ。言い様のないやるせなさ。満天の星の下の会話が儚く哀しく胸をうつ終幕。米ミステリ史に残る名編だと思う。即刻「夏草の記憶」を買いに走ったのは言うまでもない(笑)2018/07/16

遥かなる想い

129
トマス・H・クックの作品を評してよく使われる言い回しに「雪崩を精緻なスローモーションで再現するような」という比喩があるそうだが、本作品は まさにこれにあたる。クック独特のこの描写により読者は無意識のうちに その風景に入り込んで、魅了されていくような気がする。人間の心の闇のようなものを軸に、書き込んだ良質のミステリ。 (1999年このミス海外第2位)2010/05/16

yumiko

76
老弁護士の回想により語られる“チャタム校事件”。思わせぶりな出だしから、濃厚な悲劇の匂いが立ち込める。過去と現在を行きつ戻りつしながら徐々に真相が露わになる、その展開がとても巧みだ。言葉ではなく行動や表情から窺える登場人物の心の動き、不穏な空気、クックは悲劇に向かう過程を急くことなく丁寧に慎重に書き進めていく。これは田舎町のありふれた恋人たちの悲劇に見え、その実思春期の少年の自分を取り囲む世界への反発が招いた悲劇でもあるのだろう。重い重い読後感。暫しこちらの世界に戻れないほどの一冊に久しぶりに会えた。2016/02/17

キムチ

55
緋色と言う感触は不可侵の臭いがする。チャタム校事件~と何度も引用される割には具体的事件描写はない。様々な人の憶測めく密やかな語りが渦巻いている。好き嫌い有るだろうなと思う。抑えの強い、ある意味マゾヒスティックな場面温度を読ませる。後半部収斂されていく空気で楽しくはないひんやり感を満喫はしたが。老境に入り回想する語りで進むこのタイプ…よくも悪くも主観の叙情に浸る醍醐味が文学観賞のならいだけど、確かに訳は素敵だし、クックの技量は凄技だし~私にそぐわないだけだ。2015/10/19

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