出版社内容情報
連続殺人事件の発生から犯人の死刑執行までを克明かつ重層的に描いた直木賞受賞作。世紀を超えた執念の全面改訂版、待望の文庫化。
内容説明
列島を縦断しながら殺人や詐欺を重ね、高度成長に沸く日本を震撼させた稀代の知能犯・榎津巌。捜査陣を翻弄した78日間の逃避行は10歳の少女が正体を見破り終結、逮捕された榎津は死刑に―。綿密な取材と斬新な切り口で直木賞を受賞したノンフィクション・ノベルの金字塔を三十数年ぶりに全面改訂した決定版。
目次
畑
峠
車
血
貌
火
声
刃
汗
濘〔ほか〕
著者等紹介
佐木隆三[サキリュウゾウ]
昭和12(1937)年、北朝鮮に生れる。福岡県立八幡中央高校卒業。38年「ジャンケンポン協定」で新日本文学賞受賞。39年まで八幡製鉄所に勤務、以後著述を業とする。51年「復讐するは我にあり」で第74回直木賞を受賞。平成3年「身分帳」で第2回伊藤整文学賞受賞。平成18年より北九州市立文学館館長を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
104
5人を殺害した西口彰事件を題材にして、緒方拳主演で今村昌平が映画化した原作をようやく読んだ。映画が1976年のころらしいので、読もうと 思ってから随分たったことになる。本書を読んでいると、松本清張の作品を読んでいるようで変に落ち着くが、逆に読んでいてわくわくするような緊張感はない。 2010/06/06
honyomuhito
78
宮部みゆきの「理由」はオマージュなのだろうかと思うほど事件の関係者の証言を積み上げて話を展開させる手法、犯人確保のされかたが似ている。その後の作家たちに新たな手段をもたらした分岐点的な作品なのかもしれない。平成も終わろうとする今読むと、時代の移り変わりと人間の変わらなさを感じる。犯人の色欲、金銭欲、支配欲の強さにドン引きしつつ、こういう全方向に意欲の強い人間が間違った方に向くと、とんでもない事件起こすのかと恐れ慄く読書だった。https://chirakattahondana.com/復讐するは我にあり/2018/11/03
33 kouch
54
全国を巡りながら行商する、或は絵を描くといった生活には昔から憧れがある。まさかその犯罪バージョンがあるとは。知能犯ということよりも、それをやろうとする度胸が凄い。オリンピックで治安維持に躍起になっている監視下、何故捕まらないのかも不思議。捕まってからの減らず口も印象的。これがノンフィクションというから凄い。その人間像は切れ者のサイコパスというより、直情的なところも多く、むしろ人間らしささえ感じる。まぁこの辺が人たらしで詐欺師な所以なんだろうが。弁護士を騙る内容をみると想像力も豊かなんだろうな。2024/07/21
Vakira
54
なんともカッコイイ題名。クールな復讐劇を想像してしまう。モデル実話あり。誰が誰に復讐するのか?刑事あるいは被害者が犯人へ?しかし本来の意味は新訳聖書(ローマ人への手紙 第12章19節)にある言葉「愛する者よ、自ら復讐するな、ただ神の怒に任せまつれ。録して『主いひ給ふ、復讐するは我にあり、我これに報いん』」から来ている。よって報復を与えるのは神である。では神は誰に復讐するのか?そもそも実話の小説化に神が登場するのか?佐木さん上手い。この題名の所為でもしや?刑事ではなく犯人こそが神の分身かと思わせる。2021/08/22
GaGa
53
再読。これは映画が最初だった。が、映画の後小説を読み感銘を受けた。これはノンフィクションノベルで主人公は創作名となっているが、詐欺と殺人を繰り返した西口彰という男がベースである。昨今ではこのような犯罪を男ではなく女が行っていることが印象深い。ノンフィクションノベルとしては、カポーティの「冷血」を何倍も上回る作品なので、是非とも多くの方に読んでもらいたい。2012/12/06