出版社内容情報
第一次大戦下、ヨーロッパを苦しめた黄色い霧の亡霊は、やがて東京の地下鉄車内に甦える。科学者の善意がいかにして悪を生んだか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリータ
9
◆単行本1991年光人社刊。文庫は1996年1月刊、オウムのサリン事件を受けて一節を追加。著者は『週刊文春』元編集長、医療系ジャーナリスト。◆WW1~イラン・イラク戦争までの化学戦・化学兵器開発史。「科学者」の側面はWW1で毒ガス開発に関わったハーバー、ボッシュ、ネルンスト、ハーンらの事績が主。横道には逸れるものの、ユダヤ人科学者を排斥するナチスドイツにあって核分裂を発見したハーンに関する記述には興味を持った。◆疲労もあって気持ちが上向かないので気分転換にはちょうど良かった(随分前から積読だったし)。2020/08/06
Akiro OUED
1
アメリカは、かつて毒ガスを殺さずに戦闘能力を奪うことができる人道的兵器だと主張した。じゃ、なんで広島・長崎に毒ガス爆弾を使わなかったのか。科学の研究成果が兵器になりうることを以て、平和的な研究だけをやるという日本学術会議の崇高な理念は、非現実的だということがよく分かる一冊。2023/03/01