内容説明
1960年、安保後の騒然とした世情の中で首相になった池田勇人は、次の時代のテーマを経済成長に求める。「所得倍増」。それは大蔵省で長く“敗者”だった池田と田村敏雄と下村治という三人の男たちの夢と志の結晶でもあった。戦後最大のコピー「所得倍増」を巡り、政治と経済が激突するスリリングなドラマ。
目次
ささやかな発端
黄金時代
戦後最大のコピー
第三のブレーン
敗者としての池田勇人
敗者としての田村敏雄
敗者としての下村治
木曜会
総理への道
田文と呉起
邪教から国教へ
勝者たち
やがて幕が下り
世界の静かな中心
著者等紹介
沢木耕太郎[サワキコウタロウ]
1947年東京生まれ。70年に横浜国立大学経済学部卒業。浅沼稲次郎刺殺事件のその一瞬を描ききった『テロルの決算』で79年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『一瞬の夏』(81年新田次郎文学賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
111
沢木耕太郎さんの珍しい政治家ー池田勇人ーについてのノンフィクションです。よく調べられていて池田勇人、田村敏雄、下村治という当時としてはかなり無理ではないかと思われた「所得倍増政策」を実行させた三人に焦点を当てています。かなり周りの人物などをこまめに調べられていて私にとっては結構参考になりました。このような話を読むと環境は異なると思うのですが、最近の○○ミクスなどという実態は何もない政策をしようとした政治家が小さく見えます。2022/10/16
遥かなる想い
67
ボクサーを描く沢木耕太郎と違って、池田勇人を書ききれていない。 やはりノンフィクションの場合、書き手がどこまで 入り込めているかによって、筆致の迫力が違ってくるように 思う。 2010/05/08
Book & Travel
52
1960年、反安保闘争で社会が混沌とする中、所得倍増政策を掲げ経済成長への道筋を付けた池田勇人首相と、そのブレーンだった下村治、田村敏雄を描いたノンフィクション。経済学部出身の沢木さんだけに、当時や執筆時の70年代の経済状況も詳しくよく分かる。しかし何と言っても魅力的なのは人物の描き方。敗者であった3人が楽観的な経済成長論を進めたという捉え方が興味深い。「世界の静かな中心であれ」という言葉も印象的。雑誌掲載から29年経って本作が出来た経緯を述べた後書き、下村の息子による解説と、最後まで読み応えがあった。2021/12/11
booklight
34
1977年に文藝春秋に書いたものを2006年書籍化。沢木耕太郎の最初期の作品。本人曰く、雑誌掲載後書籍化をせずに『一瞬の夏』の仕事を選び、以後スポーツ系の仕事選ぶようになったとのこと。スポーツ系では独特の対象への迫り方「シーン」の求め方に沢木耕太郎らしさがでている。その手法がすでに使われてはいるがどこか物足りないものを感じた。池田、田村、下村の三人で「所得倍増」を作り出した、という視点はいいが、池田を扱ったにしては物足りない。1977年であれば、まだ色々とオンタイムで得られる情報もあり、事情も違うかな。2024/09/14
GaGa
31
「所得倍増」のキャッチフレーズは知ってはいたが、池田勇人が大蔵省では敗北組であるというのは知らなかった。また、有名な「貧乏人は麦を食え」発言が流れた背景や、ブレーンであった田村、下村の二人が克明に書かれており、安保闘争後の政治のあり方を伝えてくれる。まあ、昔の政治家は骨があったなあ(苦笑)2010/12/28