内容説明
ライヴァルを倒し、記録に挑み、ひたすら戦いつづけることで王座を手にした男たちも、やがてはその頂点から降りざるをえない時がやってくる。彼らの呻き、喘ぎ、呟き、そして沈黙が、今ふたたび「敗れざる者たち」の世界に反響する。久方ぶりに沢木耕太郎が贈る、勝負にまつわる男たちを描いた五つの短篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
67
沢木耕太郎らしいノンフィクション集。ただし、文体に慣れてくると、感動も少なくなる。大場政夫というボクサー、私は事故で死んだ記憶しか ないのだが、沢木耕太郎の中では大きいのだろう2010/05/08
Y2K☮
33
至高のスポーツ・ノンフィクション五編。輪島功一はタレント時代しか知らないけど壮絶なキャリアの持ち主。「潔さ」の美学は私も好きだが、納得いくまで現役を続けることを往生際が悪いとは思わない(年齢制限のない政治家や経営者はまた別)。まだできるならとことんやるべき。ただ輪島の場合は廃人になるかどうかの瀬戸際だったし第三者がどうこう言えない。瀬古利彦の話は私の世代なら有森&松野の一件を連想するはず。選考基準の不明瞭さは改善されたのかな。メダル獲れたからOKという問題ではない。著者の本を読むとボクシングを見たくなる。2020/12/16
kawa
29
書棚に眠っていた92年文庫本を「旅のお供」に持ち出し。スポーツ選手の引退間際とその後の周辺をルポルタージュ。ボクシングの大場政夫、輪島功一、ジョー・フレイザー、マラソンの瀬古俊彦等5編。どれも読みごたえ有りなのだが、ニューオーリンズへ飛んで場末クラブでロックを歌うフレイザーにインタビューを試みるも失敗断念の「王であれ、道化であれ」、日系トンガ人で大相撲、野球、ボクシング、プロレス・レェフリー異色経歴を持つ前溝隆男の「ガリヴァー漂流」が印象的。超有名と超マイナー、変わらない緊張感で彼らの人生を切り取る。2023/06/18
しーふぉ
15
大場政夫と瀬古利彦の2本を特に興味を持って読んだ。沢木耕太郎のノンフィクションを読むと対象の人物をほとんど好きになる。2014/02/19
Terry Knoll
6
大場政夫、瀬古利彦、輪島功一、前溝隆男、ジョー・フレイジャー。 5人のスポーツ選手(瀬古以外はボクサー)を扱った雑誌連載をまとめた短篇集。 プロの世界で、頂点を極めるのはほんのひとにぎり。大場は五回目防衛戦の約20日後に、スポーツカーで交通事故で死亡。アリをプロとして初めて負かしたジョー・フレイジャーは引退後場末のライブバーでロックを歌っていた。 栄光の輝きにも、闇や影があると感じる作品です。 2017/10/07