出版社内容情報
豊かな感性でロマネスクを展開した中島敦と日本の小説に象徴主義の世界をもたらした梶井基次郎。二人の天才の全貌がわかる作品集
内容説明
持病の喘息とたたかいながら、自己を問いつめ、その孤独と絶望を、中国古典の中に、また南洋への夢に託して、気品ある文体で物語を綴った中島敦。やはり病者ならではの鋭敏な感覚と強い生命への希求をこめて、詩的散文を書いた梶井基次郎。早世した二人の天才の偉業を一冊に収めた、21世紀への日本の遺産。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
2兵
3
中島敦が読みたくてこちらを選択。梶井基次郎は新潮文庫版『檸檬』で読んだことがあったので復習として。早熟で病者で早世してしまった天才小説家で、教科書によく載るという共通項があり、どちらも感受性豊かかつペシミスティックな作品が多いように思う。中島敦は『山月記』がやはり文体的にも別格。『光と風と夢』のスティーブンスンしかり『山月記』の虎しかり、作者による彼らの姿を借りての悲しみと慟哭が伝わってくるようだった。梶井基次郎も映像が浮かぶ作品が多く、何度読んでも面白い。あと猫好きなんだろうなと思わされた(笑)2021/09/14
アルクシ・ガイ
1
梶井基次郎は「檸檬」のみ。代名詞が混乱していて読みにくい。今だったら絶対に編集のチェックが入る。2014/03/03
fumiko212
0
梶井基次郎「檸檬」のみ。教科書の文学史のコーナーで作家とタイトルだけをいくつも覚えさせられた。実際に読んだことのない本のタイトルだけが頭に残っているという可笑しな記憶を埋めてみようと読んでみた。若くして心も体も病んだ者に、檸檬は生命力の塊のように感じたのだろうか。好きだった香水瓶やパイプよりも自然の造形である檸檬を好ましいと思う気持ちは健康な若者にはなくとも今の私には少し共感できる。ただ、今の時代、カリフォルニアから来た薬まみれのレモンから生命力は感じられない。つくづく小説とは時代と共にあるものなのだ。2012/07/27
ダナヲ
0
山月記の文体は最強。2011/11/05
超エコドラネコ
0
青空文庫で中島敦の作品を読んでいたら注釈や解説を読みたくなって図書館に行くと書庫から出されたのがこれ。梶井基次郎の作品群とカップリングされた本が出てきて驚いた。二人は病気で早世したという共通点があった。読んでみてこの組み合わせは本当に凄いと感じた。どちらも天才。檸檬だけ読めたら返そうと思っていたが結局全部読んでしまった。猫を飼ったことがないので危険度が分からないが猫の足の肉球を瞼の上に載せる行為は相当猫好きなんだろう。いろんな作品が多数収録されていて、注釈も読み易くて良かった。2020/10/07