出版社内容情報
心が通わない妻と放蕩息子の間で人生の空しさと焦りを感じる紙屋新兵衛が、薄幸の人妻おこうに想いを寄せ、深い闇に落ちていく。
老いを感じる男の人生の陰影を描いた傑作長篇
心が通わない妻と放蕩息子の間で人生の空しさと焦りを感じる紙屋新兵衛が、薄幸の人妻おこうに想いを寄せ、深い闇に落ちていく。
内容説明
はじめて白髪を見つけたのは、いくつの時だったろう。四十の坂を越え、老いを意識し始めた紙商・小野屋新兵衛は、漠然とした焦りから逃れるように身を粉にして働き、商いを広げていく。だが妻とは心通じず、跡取り息子は放蕩、家は闇のように冷えていた。やがて薄幸の人妻おこうに、果たせぬ想いを寄せていく。世話物の名品。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。著書に「白き瓶―小説 長塚節」(吉川英治文学賞)など多数。平成元年、菊池寛賞受賞、6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞、7年、紫綬褒章受章。9年1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
96
不倫ものか~~と思いながらも、いつしか主人公に思い入れをしてしまう。ダブル不倫を下世話なものにしてしまわないところが藤沢周平たるところ。JW氏とは違うところだ。さてJW氏とは誰でしょう?2018/02/14
ふじさん
68
40の坂を過ぎ老いを意識し、自分の行く末を考え始めた紙商新兵衛。心の通じぬ妻、放蕩息子の長男、家は闇の様に暗く冷え冷えとしている。そこに、丸子屋のおかみのおこうと知り合う機会が、彼女との密会を種に脅されることになるが、新兵衛の満たされる心は、おかみのおこうへと傾く。紙屋仲間との関係もうまく行かず、行き詰まる新兵衛、転落への道を歩むのか。 2020/10/19
優希
60
味わい深い作品でした。40を過ぎた男性の心の機微が丁寧に描かれていると思います。40過ぎてからの商いは順調なのに、家庭は上手くいっていないところに寂しさを感じずにはいられませんでした。暗いトーンなのに心に入ってくるのはこの寂しげな色合いなのでしょうか。心通わぬ妻と放蕩息子。完全に冷えた家庭。新兵衛とおこうの出会いが希望を見せてくれるのでしょうか。商いも邪魔をされるようになり、新兵衛は一体何処に貶められようとしているのか気になります。2014/09/13
優希
46
50歳が見えてきているのでしょうね。中年の哀愁を感じます。おいを意識し、商いにより力を入れる新兵衛。これでうまくいけば良いのですが、妻とは心が通じず、息子は放蕩と家庭も冷たい状況というのが何とも言えません。だからこそ人妻・おこうに想いを寄せていくのかもしれないですね。下巻も読みます。2023/02/11
ach¡
44
実は私のファーストキス…ぢゃなかったファースト時代小説は海鳴りなのだ♡手元に無かったので再読を兼ね新装版買ってみたvでも、アレぇこんなに身につまされる話だっけかw糟糠の妻だと言いつつ愛想ない古女房に不満が募る男。家庭に安らぎを得られなくなったオッサンの前に現れる憂いをまとった無防備な人妻( ๑´艸` ๑)ひょんなきっかけで運命が交錯する二人…男の不埒な心理をこれでもかと描く、本作のGODなかなか辛辣ゥ♥秘密が秘密を重ねスリリング&ムフフな展開。その甘く危険な薫りに誘われ頁を繰る手が止まらんw一気読み必至ス2016/01/02