内容説明
無眼流の遣い手である源次郎は、松平右近将監から探索を依頼された。幾度か張り込み、追跡、死闘を繰り返したのち、ついに八嶽党の隠れ家で強敵・八木典膳と対峙するが、罠にかかり地下牢に閉じ込められてしまう。その間に、将軍世子の家基が八嶽党によって毒殺される―著者の新境地を拓いた傑作伝奇小説。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。主要な作品として「白き瓶 小説長塚節」(吉川英治文学賞)など多数。平成元年、菊池寛賞受賞、6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞、7年、紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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海猫
134
下巻もたいへんに面白く、派手な筋立てで意識して伝奇ロマンを書いているにしても最終的に藤沢周平らしい小説として結実。読み終わってみると活劇よりもしっとりした人間ドラマが印象に残る。また背後にあった陰謀が徐々に見えてくる不気味さにも味があり、「闇の傀儡師」というタイトルの秀逸さも染みてくる。ただ逆に考えれば藤沢作品としては装飾過多にも思えてしまう。やはりシンプルな内容の方がこの筆致は引き立つような気がする。資質が伝奇向きの人ではないし、これ一作のみというのも納得。いろんな意味で屹立した作品ではあった。2016/03/17
じいじ
76
いよいよ満を持して白刃が潜む八嶽党の隠れ家へ。源次郎は生死をかけた闘いの前に、実母との対面のために帰郷します。万感胸に迫る場面です。「自分から廃嫡を望んだ身」と実家の玄関で、室内に上がるのを拒否。母の情愛を感じながら辞します。この物語、本筋と並行して登城する女性たちも見所です。離縁せざるを得なかった妻、その妹・清楚で内気な津留、純情可憐な毒婦のお芳…など源次郎を支える名わき役です。剣はたつが人情には脆い…一匹狼・鶴見源次郎の物語、時代小説の醍醐味を堪能しました。2022/11/19
nakanaka
71
八嶽党との争いがヒートアップしていくのかと思いきや、意外な方向に急展開していくストーリーにグイグイと引き込まれました。大きな本筋以外でも様々なサイドストーリーがありそこも秀逸ですね。特に源次郎の亡くなった前妻の真実などは切ないものでしたし、年老いた源次郎の大師匠が長年の宿敵と果し合いをする場面は手に汗握るものでした。上下巻で600ページ以上でしたが全てを描き切れていない感があるような気もします。それでも藤沢作品の長編時代小説は久しぶりだったのでやっぱり面白いなぁと実感できる読書となりました。2022/10/18
goro@the_booby
56
長いものに巻かれるかと思いきや踏みとどまる源次郎は出来た男だった。そして昨日の敵は今日の友、八嶽党も単なる駒でしかたなかった。可哀そうって云うのは惚れたって事よ。お芳を描くことでグルっと回転させた周平先生の哀しみを誘うテクニックお見事です。「海坂藩城下町 第5回読書の集い【冬】」イベント参加中です。2020/01/15
優希
53
怒涛の展開とでも言うべきでしょうか。源次郎は死と隣合わせの戦いに挑むことになります。地下牢に閉じ込められたときはどうなることかと思わされました。無事救済されるものの家基が殺されるという出来事が待っているのが鳥肌が立ちました。人の世界の深い闇を抉り出している伝奇小説。息を呑む展開の物語に引き込まれました。2023/02/04