内容説明
この作家のロングセラー“隠し剣”シリーズ第二弾。気難しい読者をこれほど愉しませた時代小説は稀れである。剣の遣い手はさらに多彩に。薄禄の呑んだくれ藩士のくぐもった悲哀を描く「酒乱剣石割り」、醜男にもそれなりの女難ありと語る「女難剣雷切り」など、粋な筆致の中に深い余韻を残す名品九篇を収載。剣客小説の金字塔。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。主要な作品として「蝉しぐれ」「三屋清左衛門残日録」「一茶」「隠し剣孤影抄」「隠し剣秋風抄」「藤沢周平短篇傑作選」(全四冊)「霧の果て」「海鳴り」「白き瓶小説長塚節」(吉川英治文学賞)など多数。平成元年、菊池寛賞受賞、平成6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞、平成7年、紫綬褒章受章。「藤沢周平全集」(全25巻文芸春秋刊)がある。平成9年1月逝去
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感想・レビュー
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ミカママ
448
【海坂藩城下町 第4回読書の集い「寒梅忌」】参加作品。日本時間では間に合わなかったが、当地時間でギリギリ寒梅忌に読了。短編なため、作品ごとに登場人物や状況を把握するのに苦戦したが、やはり重要なシーンで女子(おなご)が絡んでくるところが、非常に好み。剣の達人・デキる男と、ひたすらそれを待つ女。いいんだよなぁ。沁みるんだよなぁ。2019/01/26
HIRO1970
171
⭐️⭐️⭐️⭐️久々の藤沢先生。先生の著書は通算6冊目。何れ劣らぬ短編が9つも入った大変お得な一冊でした。どれも甲乙つけがたいのですが、敢えていうなら最後の作品が盲目の主人公ですが、一番輝いていたように感じました。ますます藤沢先生にハマりつつあります。やっぱり先生の剣客ものは見逃せない魅力がありますね。皆さんにオススメします。2016/05/16
ヴェネツィア
164
「孤影抄」の続編。9つの短篇を収録。基本的なスタイルは前作と同じだ。いずれの物語でも、登場人物たちに向ける藤沢周平の眼差しは暖かい共感性に満ちている。ただ、今回はその隠し剣を生かしようもない、実にやるせない物語も描いている。その典型的なのが、「陽狂剣かげろう」だろう。婚礼を間近にしながら、若殿に許嫁を差し出さなければならなかった半之丞は、自ら「狂」を演じるしかないところに追い込まれて行く。そして、その最後はあまりにも無残だ。幕藩封建体制下にあって、どうすることもできない不条理が厳然とそこにはあったのだ。2013/02/21
ehirano1
162
「暗黒剣千鳥」について。暗黒剣と聞けばファイナルファンタジー4のセシルが直ぐさま思い浮かんでしまう私は読書の修養が足りません(涙)。それはいいとして、剣術の蘊蓄等はサラサラなく、短編ながらのテンポの良さとミステリーにワクワクしっぱなしでした。アサシンはてっきり婚約者だとばっかり思ってたんですけどね。2023/06/17
じいじ
126
「隠し剣…」シリーズの第二弾、文句無しに愉しませてくれます。武家社会を描いた9つの物語は、シリアスでミステリアスで、時として艶っぽくて…面白いです。一話一話の結びが素晴らしい、単なる剣豪小説に終わらない奥深い読み応えです。そして、登場する妻女たちがとても魅力的で、物語を引き立てています。或る日、盲目になった夫から、不倫の疑いをかけられ離縁される妻女に惹かれました。この夫婦の結末は、ぜひご自身で味わっていただきたい。自信をもってお薦めしたい作品です。2018/10/02