内容説明
世に揉め事の種はつきぬとはいえ、依頼主のもち込む話は多彩を極める。中年夫婦の離縁話、勘当息子の連れ戻し、駆け落ち娘の探索等々。武家と違い、万事気侭な裏店にも、悲哀にみちた人生絵図がある。円熟期にあるこの作家の代表的連作シリーズ、愈々佳境。人の姿、世の姿の哀切な陰影を端正に写し出す話題作。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。主要な作品として「蝉しぐれ」「三屋清左衛門残日録」「一茶」「隠し剣孤影抄」「隠し剣秋風抄」「藤沢周平短篇傑作選」(全四冊)「霧の果て」「海鳴り」「白き瓶 小説 長塚節」(吉川英治文学賞)など多数。平成元年、菊池寛賞受賞、平成6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞、平成7年、紫綬褒章受章。平成9年1月逝去
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
92
水野忠邦の天保の改革で疲弊する江戸の人々から依頼される話は多彩、中年夫婦の離婚話、勘当息子の連れ戻愛、駆け落ち娘の探索等。よろずや稼業と兄の監物の手伝いに追われる日々を過ごす平四郎、なかなか先を見通せない人生にも希望の光が。一度は諦めた道場開きが実現、更には元許嫁の早苗が夫と離縁し、平四郎の元へ。下巻は、殺陣のシーンも多く最後まで楽しませて貰った。市井の人々には悲哀の満ちた人生模様があり、作家の円熟期の作品だけに、人の姿、世の姿の哀切さや陰影が色濃く、巧みな筆さばきで描かれており読み応え十分連作集。2024/12/02
matsu04
86
よろず仲裁の看板を掲げる神名平四郎が市井の人々の揉め事を解決していく連作短編。下巻もまた良い。とても気軽に読める。が、決して軽いだけでなく泣かせるポイントは外さない。懸案の道場も出来、早苗との関係やら何もかもがうまい具合に片付き、めでたしめでたしではあるが、これでお終いというのが実に淋しい。(再読)2020/06/30
ふじさん
76
水野忠邦の天保の改革で疲弊する江戸の市井の人々の生活が生き生きと描かれており読み応えあり。よろずや稼業と兄監物の手伝いに追われる日々を過ごす平四郎、なかなか先を見通せない人生にも希望の光が。一度は諦めた道場開きが実現、更には元許嫁の早苗が夫と離縁し平四郎の元へ。それぞれの短編には、人の人生模様が描かれ、殺陣のシーンも多く最後まで楽しませて貰った。周平の作品は何度読んで面白い。 2020/11/14
shincha
75
シビアな政争に巻き込まれる実兄を助ける働きをしたり、市井の庶民たちの困りごとを助けたり、ヒリヒリするような命のやり取りがあったり…。やっぱり藤沢周平さんの作品は、時代小説の宝石箱や~。連作短編集の中に1本の大きな柱があり、江戸末期の武士たちの精神構造や、庶民の生活を垣間見ながら、平四郎の剣の腕を使ったり、知恵を使ったりしながら、生活していく様子が生き生きと描かれている。あ~面白かった!2022/02/08
Atsushi
72
旗本神名家の冷飯食い平四郎が、よろずもめごとの仲裁を生業として八面六臂の活躍をする物語。天保年間の政権争いに巻き込まれた兄を護るため、敵の一味と剣を交えるシーンは迫力満点。また、当時の江戸の町並みや風景が季節の移ろいとともに描かれていて味わい深い。多くの障壁を乗り越えた平四郎と早苗に幸あれ。2018/10/20
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