出版社内容情報
処女小説「溟い海」の背景、郷里鶴岡のこと、少年時代、師、友など小文・エッセイ八十篇。藤沢ファンには見逃がせない一冊である
内容説明
北斎晩年の遣り場のない鬱屈を鮮烈に描いた処女小説「溟い海」は、執筆当時の作者の自画像であったという。当代随一の時代小説の書き手であるこの作家はこれまで自身を語ること稀であった。郷里鶴岡と幼年時代、師や友、創作秘話、日常身辺などを簡潔に綴る、作品と併せ読むべき興味津々たる一冊、藤沢ファンには待望の名エッセイ。
目次
「どうだん」の花
のど自慢風景
狼
暑い夜
アップアップ
「都市」と「農村」
心に残る人びと
鈍行列車
「長塚節・生活と作品」
北ホテル
グレアム・グリーン
読書日記〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
477
藤沢周平先生がエッセイを書いておられたとは。好きな作家のエッセイとはつねづね、ご本人が残した小説の隙間を埋める「にかわ」のような役割を果たすと感じている。今作中では故郷を偲び、山川を駆けめぐった幼年時代を懐かしみ、大好きだという海外ミステリ(意外!)について語る。あちこちに出展された掌編の集大成なので、飽きずに次から次へと話題が移るのも楽しいことだった。ファン必読。2022/04/16
KAZOO
112
藤沢さんの本はかなり読んでいますが、このエッセイ集は初めてでした。エッセイにしてはかなり自分の心のうちを赤裸々に表現している部分が多いという気がしました。ただやはり人間を大切に思う心というものがどの文章にも表れている気がしました。2018/04/24
ふじさん
90
30年ぶりの再読。藤沢周平の老いに対する思い、今なら素直に受け入れ共感することが出来る。自分を語ることが稀だった藤沢周平が、自分の故郷鶴岡と幼年時代、師や友、創作秘話、自分の老いや日常を淡々と語るエッセイ、読み応え十分。大好きな作品、「海鳴り」「一茶」「密謀」「白き瓶」等の創作秘話が面白かった。彼の作品の原点となる彼の人生が肩肘を張ることなく、普通の言葉で語られていることに好感が持てた。そこには、藤沢周平の素顔が垣間見れて読んでいて心が癒された気分になった。「徳川家康の徳」「大石内蔵助随想」が良かった。2023/07/11
じいじ
82
この10年余、藤沢さんの小説に惚れこんで懸命に読んできました。これは題のとおり、小説の周辺の諸々を書いたエッセイです。とにかく想像を超える面白さで普段着の周平さんに出逢いました。さて、10倍のスペースをいただいても面白い話がたくさんで書き切れません。夏の話を一つ。藤沢家のクーラーは客のためだけ、真夏でも自分ら家族のためにはONしません。「天然の風」の方が体に良いからだそうです。とにかく頑固です。著作の『一茶』を、丁寧に読み直そうと思いました。藤沢周平さんが、ご自分を真面目に書かれた素敵なエッセイでした。2023/08/28
優希
49
自らを語ることが稀であった藤沢さんの名エッセイ。時代小説の創作秘話などが語られます。驚いたのは海外ミステリーがお好きなこと。意外でした。2023/07/16
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- 和書
- 選ばれない人 光文社文庫