出版社内容情報
骨肉相食む「内戦」で二千人とも五千人ともいわれる死者を出し、雪と氷の中、二百余里の死への大長征を敢行した水戸天狗党の悲劇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金目
8
幕末の水戸藩で起こった天狗党の乱を山風が書いた異色歴史小説。末路が悲惨だったことはうっすら知っていたけど、当時15歳で天狗党に参加していた主人公の思い出語りが腹にずっしり来る。幕末のおよそ10年間、水戸藩に吹き荒れた狂奔の風というのが、すなわちタイトルの魔群なのだろうか。攘夷にしろ佐幕にしろ、イデオロギーにとらわれ、現実的な目線を持つことができなかったのが問題と言えるかも知れないが、誰にもどうともできなかったのがあの戊辰戦争だったのかな、とも思う。ラストはちょっと甲賀忍法帖思い出す落ちだった2020/11/29
さっと
8
幕末維新ものをいろいろと読んできて、不可思議なのはやっぱり水戸藩である。徳川御三家でありながら、尊王攘夷思想の発火点。いわゆる佐幕派、倒幕派で各藩ゆれにゆれたが、維新成ってまったく人物が残っていなかった、というのがすごい。そして、その“内戦”の代名詞が天狗党だ。本書は天狗党終焉の地である敦賀で、首領・武田耕雲斎の子が史学会メンバーに語る独白体でたいへん読みやすい。他作品のように歴史上の人物のクロスも控えめながらあっておもしろい。ただ、彼らを待ち受けるつじつまの合わない運命、決死の行軍のゆくえは哀しい。2018/12/04
さとみん
8
物語として面白く読めたことに驚いた。それは当事者が明治になって当時を振り返る語り口だったことが主な理由だが、女性の存在も大きい。おゆんが語ったことは自分の思いと重なる点が多く、本当に男って・・・と何度思ったことか。そして幕引きのエピソードが秀逸で、ようやく天狗党のつじつまの合わない行動を悲劇と思えた。それにしても小四郎の魅力がさっぱり分からない。単なるボンボンにしか見えないのは私の目が曇っているからなのか?2015/01/11
makka
4
水戸家元家老武田耕雲斎の四男、武田猛を語りべに、水戸内戦(筑波山挙兵〜那珂湊の戦い)、京への長征、投降から300人を超える凄惨な処刑、維新後の金次郎による報復粛正まで「天狗党の乱」の一部始終をつまびらかにする。話の中心は敦賀までの行軍と諸藩の対応。非常に重い日本史の暗部を、著者らしく妖婦を絡めたり、因果応報で締めるなど、序盤からラストまで一気に読ませる圧倒的な筆力に脱帽。2013/12/01
ハザマ
4
水戸藩の天狗党の話。保守派と改革派の対立から戦国時代でもなかった大量虐殺が行われた。殺し合いの末、水戸藩の人材は皆失われた。2013/10/15