内容説明
調首子麻呂は百済からの渡来系調氏の子孫。文武に優れ、十八歳で廏戸皇太子(聖徳太子)の舎人になった。完成間近の奈良・斑鳩宮に遷った廏戸皇太子に、都を騒がす輩や謀叛人を取り締まるよう命じられた子麻呂は、秦造河勝や魚足らとともに早速仕事に取りかかるが、その矢先、何者かが子麻呂の命を狙う。
著者等紹介
黒岩重吾[クロイワジュウゴ]
大正13(1924)年、大阪に生れる。同志社大学卒業後、さまざまな職業遍歴ののち、昭和35年「休日の断崖」で文壇に登場、「背徳のメス」で第44回直木賞を受賞。55年「天の川の太陽」で第14回吉川英治文学賞を受賞。また「弓削道鏡」など一連の古代歴史ロマンにて、平成4年第40回菊池寛賞受賞
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感想・レビュー
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こぽぞう☆
20
骨太の歴史小説を期待して、題と著者だけで買ってしまって、ちょっと失敗。厩戸皇皇子は少ししか出てこないし、理想化されすぎだし。江戸時代の「捕物帳」的なものを、読んでる感じ。血生臭い事件や生々しい事件や。2016/12/11
BIN
11
黒岩氏の聖徳太子の少し後の話で厩戸皇太子の舎人であった子麻呂が斑鳩宮の周辺で起こる事件を解決するミステリー小説。足で稼ぐ刑事ものみたいな感じですね。庶民派相棒の魚足のサポートがよかった。庶民絡みが多かったが冠位十二階のこともあったし悪くはない。それにしても渡来人多いな。2016/06/10
りー
10
内容は、上宮王家滅亡の顛末ではありません。『斑鳩王の慟哭』で良い味を出していた舎人=子麻呂を主人公にした捕物帖です。秦河勝が町奉行、子麻呂は与力、子飼いの魚足は目明かし、でしょうか。将軍にあたる厩戸も、まだ若くて政務に意欲的。その後を読んでいるとちょっと切ない。物部という巨大勢力が滅び、冠位十二階が定められる頃。時代に翻弄される男女を生々しく描いています。・・・男女、といっても、女が人間になったのはごく最近で限られた地域なのだな、と、溜息。物、場合によっては物以下です。狩猟採集時代はどうだったんだろう?2018/10/06
あかんべ
7
黒岩作品初読み。作者名からなんとなく暗くて重そうな気がしたが子麻呂が獣道のように走って作った道を進む姿や、魚足のとぼけた性格など社会制度があまりに違う世界をおもしろく描いている。2014/04/24
ひろ
6
廐戸皇子の時代、秦河勝のもとで事件の捜査にあたる調首子麻呂(つぎのおびとねまろ)の活躍を描く。人間味溢れる子麻呂の悩みも含めて描かれ、当時の世相などに想いを馳せられる。死が今の時代よりも周囲に多くあった時代。法律も未発達だったので、調首の役割は重要だったに違いない。2023/06/09