内容説明
同人誌「焼畑文芸」に載った処女作がヒョンなことから「直廾賞候補」となった市谷京二。周囲の羨望と冷笑、「カモ」を待ち受ける作家、編集者たち。受賞めざして繰り広げられる駆け引き、陰謀の末の悲劇!ブンガクをめぐる狂乱と欺瞞を徹底的にカリカチュアライズして描き文壇を震撼させた猛毒性長篇小説。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934年9月24日大阪府生れ。57年同志社大学文学部卒業。60年SF同人誌「NULL」を発行、処女作「お助け」が江戸川乱歩に認められデビュー。81年「虚人たち」で泉鏡花文学賞、87年「夢の木坂分岐点」で谷崎潤一郎賞、2000年「わたしのグランパ」で読売文学賞などを受賞。「この世にありえない虚構」を描く独創的、実験的な作品で常に日本文学をリードし刺激し続けてきた。93年教科書に採用された作品が抗議を受けたことをきっかけに断筆宣言、96年から執筆再開。また97年には俳優として本格デビュー、テレビ、映画、舞台などで活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
97
文壇の裏側を戯画化していて面白かったです。処女作がひょんなことから直升賞候補となったことから始まる駆け引きを描いています。でもこれが著者や作家志望者を含め、文学に関わる人たちを強烈に風刺している滑稽さと散りばめられたブラックユーモアであることにニヤリとしてしまいます。ノリノリの下世話さや散りばめられたギャグ。最後までドタバタで描ききるのが凄いと思いました。文学の周りには変な人しかいないような錯覚に陥ります。文壇を震撼させた毒本、最高でした。2015/10/21
GaGa
48
時間をかけて再読してみた。これは「俗物図鑑」の延長線上の作品で、「俗物図鑑」が多視点でのエンターテイメントを追い求めたのに対し、本作では理不尽な状況で追いつめられる個人を描いている。映画化(「文学賞殺人事件」)されているが、見事に失敗作に(それはそうだろう)この作品を二次元から三次元へと作り替えるのはそうとう難しい。2012/11/03
ジンベエ親分
34
再読。リアルタイムで読んだ時は、あまりの私怨と悪意と毒に呆然としたものだ(笑)。私怨といえばあまりにも明白な、清々しいまでに明らかな私怨小説なのだが、まあそもそも小説家が小説を書く動機なんて元々そんなものかもしれないな、と思う。そういう目で見れば、他の筒井作品と比較して「毒」は明らかに薄められている。何人かの登場人物は実在の人物がモデルとすぐ分かるだけに、筒井毒素全開だとあまりにも、ということなのか(笑)。本作の初刊から今年はちょうど40年目にあたるわけだが、こうしてみると「文壇」も激変したのだなぁ…2017/03/15
GAKU
32
やはり筒井康隆さんは凄い作家だ。この作品も筒井ワールド炸裂。文学同人誌、直木賞、選考委員、編集者等、文壇及びその周辺に群がる人達をパロディ化し痛烈に嘲笑している。連載当時「あの連載をやめさせろ」とモデルにされた選考委員のある作家(あとがきには“大きな唇で”と記述されていました)が「別冊文藝春秋」編集部へ怒鳴り込んできたという、曰く付きの作品です。よくこれだけ書けたものだと改めて感心しました。沢山の筒井さんの作品を読んできましたが、何故今までこれを読んでいなかったのだと、遅ればせながら後悔の念。2015/09/25
さっとる◎
25
とても面白かったのだが。とても面白かったのだがこれまた深いな!ブンガクの世界における筒井さんの立ち位置やっぱり特殊(笑) 断筆してた時とか筒井さん知らなかったしタイムリーにはわからないけど、こういう人に断筆させたら日本は世界は終わりだ。昨今は携帯で気軽に小説が投稿できたりで文学界事情も当時とは異なるのだろうけど。「文学をやるためにはまず、地獄の底まで墜ちる覚悟が必要」どの作品からもその覚悟が滲み出るような恐ろしい作家。ラストの映画のような場面転換、そしてタイトルがとても大好き!2015/04/19