文春文庫
月下美人

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  • サイズ 文庫判/ページ数 239p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167169374
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

「私とかれとの奇妙な交流は、絶えることなくつづいていた。かれの存在を煩わしいと思ったことがなかったのは、私自身にとっても不思議であった―」軍用機を爆破した元逃亡兵を取材する「私」と、苦悩の歳月を生きてきた男との交流を月下美人の花に託して描く表題作など、生と死をみつめる八つの短編集。

著者等紹介

吉村昭[ヨシムラアキラ]
1927年、東京生まれ。学習院大学中退。66年「星への旅」で太宰治賞を受賞。同年「戦艦武蔵」で脚光を浴び、以降「零式戦闘機」「陸奥爆沈」「総員起シ」等を次々に発表。73年これら一連のドキュメンタリー作品の業績により第21回菊池寛賞を受賞する
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

shizuka

59
昭氏の本はどんなテーマでも長編でも短編でも私の心を鎮め、穏やかな時間を与えてくれる。『逃亡』の主人公への取材顛末、男の心境の変化が事細かに書かれていて、昭氏ではないけれどスリリングな気持ちになった。彼のプライバシーが独り立ちし、余り公にしたくない過去が光を浴びることになった。彼は右往左往しながらも徐々に受け入れ、最後には人間的にも世間的にも立派な人となった。その過程に昭氏が多大なる尊敬の思いを寄せていることがよく分かる。祝賀会の夜に月下美人が大輪の花を咲かせたのも、氏と彼の関係を祝福しているようで美しい。2018/02/11

すしな

47
007-25.タイトルの月下美人から始まりますが、戦時中に軍用機を爆破して逃亡した元軍人を扱った内容で、最初フィクションの短編集だと思っていたのですが、調べたら確かに、その題材の小説「逃亡」を発表されていて、ノンフィクションだったことに驚きました。また、健康診断にまつわる生き死にの話や、自殺された従姉妹の旦那さんの話や、ご本人が18歳の時に亡くなられたお父さんの死に際の話など、死に関わる内容が多かったのですが、ご本人と周りの人間関係がしっとりと書かれていたので、後味のわくるない読み応えでした。2025/01/21

♡ぷらだ♡お休み中😌🌃💤

43
お気に入りの吉村昭さんの作品3冊目。表題作を含む8つの短編集。どの作品も、生と死にまつわる出来事を切り取ったもの。主に自らの体験や家族・親族との間で起きた出来事を題材にした実話と思われる。「沢蟹」の話を書くために実際に小料理屋さんから「沢蟹」を取り寄せたエピソードを書いた『甲羅』からは、記録文学と言われることの多い吉村作品の片鱗を垣間見ることができる。読後は、さみしさ、なつかしさ、悲しさ、無念さなどが心によぎる。2021/01/24

mondo

39
「月下美人」には8篇の短編が収められている。共通しているのは戦時下に犠牲となった一人ひとりの生臭い人間たちの姿である。最初の短編の題名が「月下美人」で、「逃亡」という小説の後日談、事件の真相が本人の口から明らかにされる内容である。「逃亡」は「戦艦武蔵」から5年後に書かれたもので、月下美人はそれから12年後に出版されている。その後、「長英逃亡」や「桜田門外ノ変」などが書かれていく。逃亡というテーマから人間の本質を問う内容である。それに続く「月下美人」の短編も戦争の醜さを私たちに突きつけてくる。2023/08/26

やどかり

18
死に関わる内容が多く、特に著者の父親の死にまつわる『欠けた月』と『冬の道』がよかった。18歳で両親が亡くなるのは、今後を思うとどんなに不安定に感じただろう。戦後、医者を見つけたり、死者を弔うのがそんなに大変なことだったとは思いもつかなかった。家族の中で死が身近だったのと、自分自身も結核で生死の境を意識することが多かったからだろう、吉村昭の作品は生死に関わるものが多いように感じる。2025/06/16

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