文春文庫<br> 星と葬礼

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文春文庫
星と葬礼

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  • サイズ 文庫判/ページ数 317p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784167169237
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

葬式が好きな知恵遅れの少年と不幸な少女の束の間の触れ合い。現実と夢が交錯する不思議な世界を鋭い筆致で描いた表題作ほか七篇

内容説明

町に葬儀があればかならず次郎の姿があった。知恵遅れの16歳の孤独な少年のたのしみは埋葬時に使う鍬をかついで葬儀に参加することと星を見つめることだった。不幸な少女時子と少年のほのかな心のふれあいの果てに来たものは。酷薄な現実の中でのふしぎな魂のゆらぎを鋭い感覚で捉えた表題作ほか秀作7篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

shizuka

61
吉村さん、作品のタイトルはどうやってお決めになられていたのだろう。一見すると内容と乖離しているようなタイトルもあれば、もうこれ以外はないだろうと思うほどしっくりくるものもある。『喪服と夏』から誰が隠し地下牢に老婆を閉じ込めてしまう話と思うか。また『煉瓦塀』から誰が屠殺される牛の話と思うか。しかし『星と葬礼』はそのまま星と葬礼のお話なのである。いままであまり気にしていなかったタイトルだが、そこからも色々な思考や、想像を張り巡らし、もう一つの読書の楽しみを見出すことができた。吉村さんの本は多面的で色あせない。2018/01/01

mondo

36
今日、7月31日は悠遠忌、吉村昭の命日にあたる。この私小説「星と葬礼」を読みながら、吉村昭の死生観についても片方で考えていた。「星の葬礼」の登場人物の次郎と時子にも本人が投影されていると感じた。葬儀がある度に不思議にその場に現れる次郎。それは少年時代から人の死に遭遇してきた吉村昭。死に対する畏怖が伝わる。親の愛情に飢えた時子は幼少の吉村昭の姿に重なる。最後に次郎が時子をあやめるシーンでは首を絞める力加減が心の内面を伝えていて、吉村昭の凄さを感じる。こうした初期の短編私小説からも吉村昭の人物を探れて面白い。2023/07/31

たぬ

26
☆4.5 作者20代後半~40歳頃に書かれた7編。いくつかは別のとこで既読。やはりこういう純文学的作品もとても面白い。純粋ゆえに殺人を犯す子供。息子たちに会いたくて噓の電報「チチキトク」を乱発する親。催事の小道具に使われ踏み潰される大量の雛。静かにゾッとさせるものばかりだった。2022/01/15

シュラフ

13
図書館で見つけた一冊。表紙画像がないのでおそらく絶版本なのであろう。だが、この一冊は拾いものであった。作品の出来ばえとしては間違いなく吉村作品の中でも秀逸であり、絶版となっているのが惜しまれる。死をテーマにした短編集。人の一生は豊かな人生であるべきであるが、この短編で描かれるのは貧困・病・エゴイズム・苦悩といった人間社会の厳しい現実に向き合わざるをえない人たちである。日頃 意識から遠ざけている悲惨や死という現状に直面することで、あらためて生の意味合いを考えさせてくれる一冊である。2014/05/21

tora

5
「死」の色が非常に濃い短編集。残酷さを感じるものの、それが嫌悪にはならないのがこの著者の優れた点であるように思う。2010/09/05

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