文春文庫
殉国―陸軍二等兵比嘉真一

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  • サイズ 文庫判/ページ数 249p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784167169220
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

中学三年、十四歳にして応召した小柄な少年の体験を通して太平洋戦争末期のすさまじい沖縄攻防の実相を迫真の筆致で描く長篇小説

内容説明

「郷土を渡すな。全員死ぬのだ」太平洋戦争末期、沖縄戦の直前、中学生にガリ版ずりの召集令状が出された。小柄な十四歳の真一はだぶだぶの軍服の袖口を折って、ズボンの裾にゲートルを巻き付け陸軍二等兵として絶望的な祖国の防衛戦に参加する。少年の体験を通して戦場の凄まじい実相を凝視した長篇小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

いつでも母さん

205
あの頃、自ら進んで『お国のために』と命を捧げた方々がいたのだ。(私の父も志願した一人だ)勿論、軍部と言う大きなものに引きずられ日本全部を洗脳したのだろう。今なら誰でもが何とでも批判出来る。これはただこうした状況で生き残ってしまった者がいたということ。それに留めたい。それでも、「もうおしまいですね」自決した沖縄の女性たちの慟哭がどうしても頭から離れない。いつもは吞気に過ごしている私だが、祈りを捧げたい8月がやって来た。2020/08/02

yoshida

160
昭和20年、大東亜戦争末期の沖縄戦。比嘉真一は14歳の少年だが鉄血勤皇隊の一員となり、陸軍二等兵として戦場へ向かう。郷土を、郷土に住む人々を、自分の家族を守るために。日本軍と米軍の圧倒的な物量差。前年の「対馬丸事件」で疎開船が米軍に撃沈された影響もあり、民間人の疎開が進まなかった沖縄は一般人も巻き込んだ壮絶な戦場と化した。艦砲射撃や火炎砲射、破壊しつくされた郷土を真一は彷徨する。眼を背けたくなる表現力だが、私達はこの事実を忘れてはならない。なぜ日本が超大国アメリカとの戦争に追い込まれたか考える時期にある。2015/11/22

サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥

131
毎年8月は戦争関連の本を読むようにしている。太平洋戦争末期の沖縄。僅か15歳で「陸軍二等兵」となった中学生真一。正直言って読み続けるのが辛くなる内容だ。爆撃により手足をもがれた負傷兵、塹壕に埋蔵されることもなく積み上げられる戦死者達。それでも盲目的なまでに日本の勝利を信じ、敵に一矢報いるべく戦う主人公。愛国心は必要な事であるし、国を守る気持ちは素晴らしい事である。だが、こうした若い子供達が命を賭する事にならぬようにすることこそが本当の愛国心であると思う。★★★★★2020/08/07

kinkin

122
中学3年生の比嘉真一は不格好な軍服を着て戦場に赴く。自分は帝国陸軍軍人として命は惜しまず立派に国を守り通す決意の溢れている。戦場は当たり前のようだが死と生が隣り合わせている場所である。同じ決意を持った同級生たち、上官そして幼い子どもや婦女が死んでゆく。読み終えて感じたのははじめは残酷な描写も頁を進めるとともに死に対して鈍感になったことだ。比嘉真一の味わった1000分の1、いや10万分の1くらいの疑似体感かもしれない。沖縄戦を体験して語ることのできる人間はかなりすくないのではないか。読み続けられてほしい。2020/07/13

at-sushi@進め進め魂ごと

97
生存者からの聞き取りを元に、沖縄戦の惨状を描いた著者渾身のルポルタージュ。米軍上陸を前に志願兵となり死に場所を求める少年が目にしたものは、肉片となって散っていく学友達、淡々と死体や千切れた手足を棄てるあどけなかった少女達、殺してくれと哀願する避難民、自ら嬰児を縊死させる母親、踏み石代わりにされる死体の山。沖縄戦では軍人より市民の死者数が多かったことは知っていたが、冷徹な文章で再構築された惨状は正に地獄絵図。本土の防波堤として犠牲を強いられた沖縄の人々に申し訳ない気持ちになること必至。日本人必読。   2021/03/09

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