出版社内容情報
第二次大戦時、杜絶状態にあった日本とドイツをつなぐ新連絡路をひらくため、数次にわたって大西洋に進攻した日本の潜水艦の、いきずまる苦闘を描く力作長篇小説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Masashi_1234567
27
第2次世界大戦の日本とドイツ間の情報や人材や物資や緻密兵器、設計図等輸送する戦史の表に表れない部分が描かれています。日本とドイツを行き来するには、陸路、空路、海路があるが、ソ連と不可侵条約を結んでいる日本としては、ソ連を刺激するわけにはいかず、海路を潜水しておこなうことがメインになります。ただしほとんどのケースが沈没します。潜水中の酸素が不足し二酸化酸素が充満して頭痛を起こすことや、沈没による人材や機密機器の消失などがリアルに描かれ読み応えがありました。 2022/03/18
たぬ
17
☆4 吉村氏29冊目。こんなにたくさんの潜水艦が造られていたことも、その多くが撃沈・爆沈していたことも初めて知った。空にも海にも敵がうようよしている海域を進むのは決死の覚悟だったことでしょう。同じ戦死なら航空機よりも潜水艦のほうがずっときついなあ。即死率が低く窒息でじわじわと死んでいくことが多いから。2020/07/22
sayzk
11
そうか、昔は潜水艦をこんな役目に使ってたんですね。当時、日本と、遠いドイツ・イタリアとでは人的・物的な交流の困難であった事。こんな事一つとっても連合国側と比べて、大きな不利になってたんですな。 吉村氏の本の楽しみの一つに「漂流」「赤い人」のように劣悪な境遇での人間の姿がドキュメンタリー風に語られるのを楽しみにしていますが、これも潜水艦の中の描写が読んでて息苦しくなります。 2015/09/23
Ted
8
’76年4月刊。◎大戦中、日独間の唯一の連絡手段だった潜水艦で片道3ヶ月かけて行われた航海の困難と苦闘を描いた秘史。U234で航海中にドイツが敗れたため自決した庄司・友永技術中佐の逸話も当然触れられているが、それ以外にも伊8、呂50(U511)、伊30、伊34、伊29、伊52、呂501(U1224)の運命も過酷で乗組員の苦難が偲ばれる。渡洋爆撃を想定した「富嶽」の潜水艦版みたいな伊400型、高速潜水艦201型など米軍を驚嘆させた技術力を持ちながらも生しきれなかったのはどこかポイントがズレていたからだろう。2016/07/24
T. Mu
7
第二次世界大戦の戦況の激化に合わせるように、人や物の運搬も含めてドイツまで往復することを目的とした潜水艦が何隻もあったことに驚いた。戦局が日本とドイツに不利になっても無謀に送られ轟沈させられた潜水艦、ドイツから日本に向けて出発したが連合国の攻撃を受け、海底に沈みながら水圧に耐えきれず圧潰した潜水艦など知らなかった歴史の1幕を知ることができた。吉村昭さんの本は、どれを読んでもひきつけられるテーマで書かれていて、素晴らしいと思う。4.52022/12/03
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