内容説明
ふらりと橋の袂から出て来た若い娘は数日間の記憶を失っていた。名主の娘、水油問屋の娘、煙草問屋の女房、筆屋の娘と神田界隈で神かくしが続出するが、これは事件か、色恋の辻褄あわせか。表題作ほか「梅若塚に雨が降る」「みずすまし」など粒ぞろいの七篇を収録。大川端の旅篭『かわせみ』を舞台に繰り広げられる人情捕物帳。
著者等紹介
平岩弓枝[ヒライワユミエ]
昭和7(1932)年、代々木八幡神社の一人娘として生れる。30年日本女子大国文科卒業後、小説家を志し戸川幸夫に師事。ついで長谷川伸主宰の新鷹会へ入会。34年7月「鏨師」で第41回直木賞を受賞。平成3年「花影の花」で第25回吉川英治文学賞受賞。平成10年、第46回菊池寛賞を受賞。平成16年、文化功労者。テレビドラマ、芝居の脚本も数多い
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感想・レビュー
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ALATA
59
神田界隈で次々と起こる「神かくし」、行方知れずの若い娘失踪の謎を解き明かす東吾の推理が冴え渡る。「この世には不思議なことなど何もないのだよ」まるで京極堂のようで爽快なミステリーでした。源右衛門に初孫がお目見え、天下の名医が襁褓洗い、七重の尻に敷かれ「麻生家の正月」が賑やかだ。冬の陽の中に取り残された東吾、通之進の心遣いが胸に染みてくる。★4※添い遂げようとする若嫁、よく出来た姑との関係は「時雨降る夜」のよう。2024/02/21
優希
44
恋愛小説の要素も増えてきましたね。東吾とるいもそろそろ祝言でしょうか。東吾が父親になったら、子供を溺愛しそうだなとか考えてしまいました。2022/05/16
rokoroko
9
(梅若塚に雨が降る)私は東京に向島に産まれ、梅若塚も近くだった。当然ゆかりの場所は平岩氏と同じと心得ていた。さいたまに嫁に来て、春日部で働いていたら「梅若塚は春日部にある」と聞かされて目を疑った。古隅田川というのが謡曲隅田川の故事にある川だと言う。なんと業平が「あれをなん都鳥」と言った場所もあると言う。しかも私に教えてくれた老人は(有名な場所知らないの?)って!「私達の墨田区と言う授業でならったもん、梅若塚も業平も東京だよ!」と言い返すも冷たい視線。なんで東武線は業平橋駅をスカイツリー駅に改名したんだ!!2015/06/02
えぐ@灯れ松明の火
7
ホントの神かくしはいなかった表題作。東吾の推理が冴えまくり。 花世が生まれたのはこの巻だったのか。七重も幸せになってよかった。2011/08/30
bookshelf_yt07
6
【あらすじ】源三郎や宗太郎など、友人たちが結婚し、各々家庭を持った。東吾も長年の恋人・るいと関係を進めようと決意する。無事に当主である兄夫妻の了承も得られ、あとは祝言のみ。ところが、東吾の元へ事件はやってくる。【感想】この巻は全体として、東吾とるいが恋人同士から夫婦へ一歩踏み出そうとしていた。兄夫婦や周りにも認められ、二人の結婚を後押ししているのが良かった。読んでいる自分も幸せになれる。また日陰の身だったるいさんの嬉し涙が溢れている。2021/08/18