内容説明
江戸市中では押込みが続発していた。そんな折、三味線流しおきんの結び文が『かわせみ』へ届けられ、解決の糸口となる。表題作他、大名家の姫君の江戸見物を描いた名品「岸和田の姫」など七篇を収録。大川端の旅篭『かわせみ』の女主人るいと恋人の東吾、八丁堀同心・畝源三郎の名トリオがおくる人情捕物帳シリーズ、新装版第十二弾。
著者等紹介
平岩弓枝[ヒライワユミエ]
昭和7(1932)年、代々木八幡神社の一人娘として生れる。30年日本女子大国文科卒業後、小説家を志し戸川幸夫に師事。ついで長谷川伸主宰の新鷹会へ入会。34年7月「鏨師」で第41回直木賞を受賞。平成3年「花影の花」で第25回吉川英治文学賞受賞。平成10年、第46回菊池寛賞を受賞。平成16年、文化功労者。テレビドラマ、芝居の脚本も数多い
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感想・レビュー
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ALATA
62
「若先生が一緒なら・・・」熊手を買いに酉の市へ、粟餅を焼く醤油のこげた匂いが年末を彩る。 そして、土手でみつけた春の摘み草、蕗の薹のほろ苦い味が季節のうつろう情景模写が素晴らしい。年の瀬に起きる不幸な事件「酉の市の殺人」「筆屋の女房」に東吾は走る。世間知らずのお姫様をお相手にする「岸和田の姫」はちょっと「ローマの休日」を思い出した★4※源太郎誕生は今作のハイライト。いい棟梁になれよ小源、夜鴉おきん。次作も楽しみです。 2023/12/25
真理そら
32
源太郎誕生。そりゃ、あんな出来事があったらいくらタフなお千絵さんの体でも持ちこたえられないよネ。『息子』は性格のよく似た職人肌の親子がおもしろい。でも東吾と源さんが間に合わなかったらひどことになってたかも。『岸和田の姫』はかわいいお話。『江戸の田植歌』は元妾のおけいさんがなんとなく怖い、お吉さんお気に入りの良吉がかわいそうすぎる。2019/01/07
コージー
14
相変わらずの安定感。源さんと東吾の息もぴったり、事件を次々と解決するが、あとに残る悲しみの数々。さまざまな人間模様を今回も堪能しました。源太郎誕生して、本当に良かった。2015/10/27
すぎやん
13
「岸和田の娘」春の陽は暖かいが、夕暮れになると温もりは弱まってゆく。そこに、満開の桜が、桜吹雪となる風景が重なる。春の一日に叶った江戸見物は、花姫にとって一生の思い出になるだろう。東吾になつく姫の姿も可愛らしい。/「息子」世間が息子を盗賊と疑っても、息子を信じ疑惑を晴らそうとする父親。自分に対する疑いが父親の迷惑とならぬよう、単身盗賊を追う息子。普段は喧嘩ばかりの親子は、心の内では互いを深く想っている。言葉でなく行動で語る姿は、いかにも職人らしい。ツンデレ親子のデレの心が垣間見える一瞬が、涙を誘う。2017/01/07
琴華
10
図書館本。「息子」の話が切なかった。最後の小源の姿に涙。そして、なんと言っても源太郎誕生!源さんの涙に思わずホロリ。源さん!本当に良かったね~!2013/11/19