内容説明
これでこの左手の小指とはお別れだ―炭鉱で働く甲造が下した決断、しかしその代償はあまりに大きかった…。北の大地を舞台にした表題作をはじめ、医学に材をとった「乳房切断」「脳死人間」、さらには名篇の誉れ高い「酔いどれ天使」など六篇を収める。人間の哀しき生と死、愛と性を描き続ける著者の原点といえる短篇集。
著者等紹介
渡辺淳一[ワタナベジュンイチ]
昭和8(1933)年、北海道生まれ。札幌医科大学医学部卒業。元同大学整形外科学教室講師。医学博士。45年7月「光と影」で第63回直木賞を受賞。55年「遠き落日」「長崎ロシア遊女館」で第14回吉川英治文学賞を受賞
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感想・レビュー
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Take@磨穿鉄靴
55
作者とタイトルからもっと艶っぽい話かと思ったけどそうでもなかった。と言うかタイトルは汗と油の染み込んだ自分と同じ様なおっさんだった。勝手に儚げで妖艶な女性の小指をイメージしてたので「あ、そうなんだ」と少し醒めた。あとはコーラが40円とかメムバーとかいろいろと時代を感じさせる世界だった。どの話の締め方も今読むと少し弱い気がした。まああまり余韻の無い麦茶の様な終わり方もこの酷暑続きの最近にはちょうど良かったのかも。★★★☆☆2018/07/17
いろは
22
小指の切断、恋愛からの無理心中、酩酊児、脳死人間、乳房切断の医療ミステリー、種馬の性交の6本立て。私は普段から、渡辺淳一が描く男女の感情の起伏の激しさだったり、湿り気のある文体や艶かしいところが好きなのであるが、医療ミステリーや競馬を描けるところ、特に馬の性交を描いているところには感心した。人間の性交だけではなく、動物の性交まで描けるのだ。もしかしたら、実際に生でその場面を見たのかもしれない。それにしても、酩酊児って事実なのだろうか。渡辺淳一も作品の題材を探すべく、普段日頃から色々と研究しているのだろう。2018/12/21
hiroshi
4
「光と影」が面白かったので、同じ医療小説を選んで読んでみた。それ程心に残る話は無かったが、医療の世界を身近に感じることが出来たように思う。2016/08/18
ベック
1
ここに描かれる作品たちは、後に開花する渡辺エロス&タナトスワールドの萌芽が散見されるなんとも生臭い世界を描いていたのである。しかし、まあ読み物としてはおもしろかった。サクサク読めてしまう。2007/03/03
hin
1
医学物の短編集。さりげなく男女の関係も盛り込まれている。渡辺淳一らしい作品集2017/06/08