内容説明
風呂の客のたくましい躰には傷痕がきざまれていた。(この客どの…もとは武士や)湯女の乳房が、客のあたまの上でおもたげにゆれている。後から入ってきた客がうかべたおどろきの表情に、二人とも気づかなかったようだ。伊那忍びの丹波大介は生きていた―。関ヶ原の戦から五年、きなくさい京で、忍びの血が呼びさまされた。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
大正12(1923)年、東京に生れる。昭和30年、東京都職員を退職し、作家生活に入る。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、35年、第43回直木賞を「錯乱」によって受賞。52年、第11回吉川英治文学賞を「鬼平犯科帳」その他により受賞する。63年、第36回菊池寛賞受賞。平成2年5月3日没
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感想・レビュー
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優希
86
面白かったです。熊本城築城前の時代に駆け抜けた忍者・丹波大介。加藤清正に仕えることになった大介。着々と支配を広げて行く家康と、天下を取り戻そうとする豊臣の緊張の中で、清正と大介が重なって行くようでした。家康と豊臣の狭間の清正を浮き彫りにすることで、大介の存在が重要な気がします。伊那の生き残りであった大介の忍びの血が呼び覚まされ、時代の水面下を動き回るのが格好良い。五感を研ぎ澄まし、暗躍する忍びの活躍に手に汗握らずにはいられません。下巻も読みます。2016/02/17
ぶんぶん
21
【図書館】時は、戦国時代・関ヶ原の戦いの後、五年が過ぎている。 徳川の天下になって豊臣勢と暗闘を繰り返していた。丹波大介、甲賀忍者の末裔である。 真田昌幸、雪村が九度山に居るが零落していた、一方、加藤清正の動向も掴めず、何かが起きる予兆を孕んだ、時代の話である。 女忍者・於蝶を巻き込んで加藤清正と徳川家康の攻防に巻き込まれる。 丹波大介の動きから熊本城築城の時代を描く忍者アクション。 大介の動きがスピーディである、女忍者小たまとの戦いが凄い。歴史に詳しくなくても何となく判るのが池波流、面白くためになる。 2022/08/27
jima
18
関ヶ原後。清正に仕える事になった忍者丹波大介。2014/04/15
Nak34
18
もっと違った忍の話かと思っていた。しまった。佐助やお江の立ち位置が、真田太平記とは違う。この作品の方が早いのではないかな。「真田太平記」が最高作品としているだけに、九度山は余り絡んで欲しくない。仕方ないので、下巻まで突っ走るが、和田竜「忍びの国」の方が好み。今の所、ん~。2012/12/30
あいくん
16
☆☆☆☆火の国の城とはもちろん熊本城のことです。関ケ原の戦いの5年後から大阪夏の陣での豊臣家の滅亡までが舞台です。加藤清正は豊臣家に忠誠を尽くしますが、徳川家康は清正を追い詰めていきます。関ケ原の戦いの5年後に丹波大介は30歳です。妻のもよは18歳です。甲斐の丹波村に住んでいます。家康は老いてなお壮健です。徳川の社稷をかためることに執念を燃やしています。大阪城の淀殿と豊臣秀頼が徳川の言うことを聞かないことに憤慨しています。いうことを聞かないなら討ち滅ぼすという決意も固めていました。2020/07/06