出版社内容情報
大正時代、大財閥と並ぶ栄華を誇った鈴木商店は、なぜ焼打ちされたのか? 流星のように現れ、昭和の恐慌に消えていった商社の盛衰。
内容説明
大正年間、大財閥と並び称された鈴木商店は、米価急騰の黒幕とされ米騒動の焼打ちにあった。だが本当に鈴木は買占めを行ったのか?丁寧な取材を経て浮かび上がる、一代で成長を遂げつつも、近代的ビジネスとの間で揺れながら世界恐慌の荒波に消えた企業の姿。そして大番頭・金子直吉の生涯。城山文学の最高傑作。
著者等紹介
城山三郎[シロヤマサブロウ]
昭和2(1927)年、愛知県に生れる。海軍特別幹部練習生で終戦を迎え21年、東京商科大学(現・一橋大)入学。卒業後愛知学芸大学(現・愛知教育大)で景気論を講ずるかたわら書いた「輪出」で32年、第4回文學界新人賞を受賞。34年、「総会屋錦城」で第40回直木賞を受賞した。平成8(1996)年、第44回菊池寛賞受賞。平成19年3月22日死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
56
明治・大正時代、三井、三菱に伍してイケイケドンドンの商売を展開した神戸の鈴木商店・専務金子直吉を主人公とするドラマ。資源のない日本が世界に伍して行くためには、工業と貿易の興隆が不可欠と、幻の総合商社を超ワンマンで陣頭指揮して財界のナポレオンと呼ばれた金子氏。世界を股にかける往時の勢いには息をのむのだが、やがて濡れ衣の米買占め犯として本社などの焼打ち事件に遭遇、さらには海軍軍縮や関東大震災により破たんの道を歩む。地味な記録文学の趣きながら当時の経済界の様子が知れて興味深い。2021/06/09
Willie the Wildcat
33
一斉風靡した名番頭。頑固一徹。近代化には程遠い人情主義。乖離を埋める人間性。無私。晩年まで金に無頓着で、”大儀”のため走り回る。故の自身命名の俳号なのか。(笑)一方、時勢が周囲を飲み込む。時の理不尽さも、悲しいかな現実。西川氏の一途さが印象的。除虫菊に垣間見る商才も花開くことがないし、花開くことも本望としない・・・。ビジネスの社会性とマスコミの公共性が厳しく問われる現代。当時を”時勢”で片付けるだけでいいのかを、改めて考えさせる。2014/03/29
kakoboo
28
先日のサラメシで城山さん思い出のお店が出ていた。先日の焼肉会で帝人に勤めていた先輩から城山作品なら鼠がいいよと勧めていただいた。という訳で読んでみました。 「歴史は裁断好き。そして少々感情的な女性である」という冒頭はお見事。 日本を代表する企業の先駆けとなった鈴木商店は米騒動で焼き討ちにあい、信用を失い倒産した。程度の知識しか持っていなかったのですが、ここでは語り尽くせない人や時代の描写、以下メモという名の駄文にて記しておきます。2015/02/27
ぼちぼちいこか
27
大正時代、米騒動があった。教科書で習って覚えている。鈴木商店が焼き討ちにあったことは「橋のない川」にも出てきた。その鈴木商店の大番頭、金子直吉の生涯が書かれていた。鈴木商店が三井・三菱・住友の三大財閥と肩を並べるほどの盛況ぶりがいつの間にか妬みを買い、マスコミに目の敵にされ、焼き討ちにあい、没落していく。マスコミの影響力と政治家の保身ぶりは現在も同じ。そして最近の石油元売りへの補助の案件は米騒動時と同じではないかと危ぶまれる。急速な近代化に取り残された直吉は哀れだが、逞しい日本人でもある。2021/11/23
まつうら
24
米騒動は鈴木商店の悪行に対して起こったことなのか? そんな問いから物語が始まっていく。以前、玉岡かおるの「お家さん」を読んだときは、鈴木商店は別に米の買い占めなどしていなかった。それに、金子直吉がそんな卑屈な商売をするとも思えない。。。 著者は本書で、大阪朝日新聞が鈴木商店を悪者に仕立てたことを暴いていく。この時代からすでに、ジャーナリズムが世論を動かす強大な力を持っていることが恐ろしい。新聞社なのだから報道倫理は守らなくてはならないが、一方で新聞販売という商業主義な一面も必要。難しいことだ。。。