出版社内容情報
大正七年米騒動で焼打ちされた鈴木商店は当時三井三菱と並ぶ大商社だった。それが昭和初頭の大恐慌で消え去るまでの隠された真実と大番頭金子直吉の人間性をドキュメンタルに衝く。解・小松伸六
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
63
容姿端麗、頭脳明晰、高学歴、行いにそつなく、隙がない、女性にもてる、そんな男がいたとする。逆に頭脳は明晰なれど、小学校すら出ていない、容姿醜貌(はっきり言って醜男)、風采揚がらず、しかし仕事の上では才気煥発、常人には及びもつかない独特の発想を持ち、自分の信ずる道を盲目滅法まっしぐらに突き進む、そんな男がいたとする。どちらが人として魅力的か。私が友に選ぶとすれば迷わず後者だ。金子直吉、スゴイ人物が神戸の経済界に、いや、世界の経済界にいたものだ。それにしても大阪朝日新聞の唾棄すべき所行・・・恥を知りなさい。2013/11/13
井戸端アンジェリか
12
「お家さん」が女目線だったので、男から見たお家さんが知りたくて購入するもヨネさんはちょっぴり、大番頭直どんの生涯を絡めた、米騒動・鈴木商店焼打ち事件・倒産が主だった。事件について扇動した男は『新聞で書いてた』と言い、新聞は『世間が言ってた』と言う。噂ですか。後年、鈴木家の子孫が学校で鈴木は酷い事をしたと教わり泣いて帰って来た事をどう思うよ朝日新聞さん。 米と言えば、何年か前の冷夏の米不足を想い出しますが、近所のオバちゃん達は『農協は隠してる、アノ米屋はお得意さんしか売らない』なんぞとガヤガヤ噂してたな。 2014/09/12
ゆーいちろー
7
様々な読み方ができる小説である。一企業の盛衰の物語でもあり、一実業家の一生の物語でもある。ある一つの歴史的事実が、種々の理由から誤解を受けたり、事実を捻じ曲げられて伝えられたりすることがあるという具体例でもある。新世代と旧世代の人間の戦いであると同時に、新旧の時代の戦いの物語でもある。急速な成長を遂げた鈴木商店は、急激に倒れてしまったけれども、その膨大な関連会社から多くの戦後を代表する企業が生まれたのも事実である。結末は物悲しいが、活力の物語でもある。2011/12/30
シュラフ
6
神戸の鈴木商店は三井・三菱・住友を凌駕する新興財閥であった。一時はその売上が日本のGNPの約1割に達したというからすごい。しかし、1918年の米騒動の際には焼き打ちに合い、1927年に倒産する。米騒動の際の焼き打ちは、大新聞による鈴木商店の米の買占めという扇動が火をつけたもの。だが、鈴木商店自体は米買占めはせずとも、社員らが裏で個人的に米の買占めを行っていた可能性があり疑惑を招いたのではないかという。鈴木商店の前近代的な経営体質をみると、ありえない話ではないように思える。 2012/08/20
YKSM
2
歴史の授業でも習う、鈴木商店の話。日本有数の商社が倒産するっていうのは、その当時凄いインパクトだったんだろうな。まだ関係者が生きている時代の作品ということでインタビューなども臨場感があります2011/11/19