出版社内容情報
自分でも不思議な樹木の影への偏愛を描いて川端康成賞を受賞した表題作ほか、秀作「鈍感な青年」「夢を買ひます」の二作を収録する
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
南雲吾朗
66
眼に入れば一瞬でしかない風景を、これ程までに精彩で美しく言葉に変換してしまう丸谷氏の表現力は、間違いなく芸術である。「鈍感な青年」は思春期の青い体験を、日常の通り過ぎて行ってしまう事柄を、常人では気付かない違う視点で観させてくれる。表題「樹影譚」は、物語の入り口は美しい文書に圧倒されるが、知らぬ間に全く別の方向へと導かれる。同作者の「横しぐれ」や、内容は全く違うがヒッチコックの「サイコ」の様な導き方である。「夢を買ひます」は、本当に何気ない日常の会話を凄く興味深く読ませる。丸谷氏の作品は本当に文章が旨い。2022/04/16
ケイ
47
村上春樹『短編小説案内』で表題作を紹介。ややこしい話。主人公は樹の影にひかれる。都心の住宅街でふと出会う、コンクリートの壁やアスファルト、また小さな公園の地面に樹の影がうつるホッとさせる光景を思い浮かばせる。そこで樹の話を書こうとするがナボコフがすでに書いている気がしてやめ、そして違う話を書き始める。ここからが長い、段々怖くなる話。作中話のキーは、継子譚。興味深い話だが、引用される比喩がまがい物で、読解が難解なため、村上春樹の解説を読み直して再読。彼の解説に感心する。なるほど、三段ロケットか。感服。2014/01/13
Tadashi Tanohata
43
大正(14年)生まれ、昭和に活躍した作家、丸谷才一。この時代にこれ程ユニイクな作家がいたとは、たぢろぐことしきり。どうでせう。特に随所に盛り込む「小説論」が面白い。「作中人物は意思を持ち作者の心の奥をあばくといふ」最後は読者に委ねられるともある。さうだよ、さうだよと、未熟にも寄せてレビユウ。2020/10/16
みつ
41
『ゲーテはすべてを言った』を読み進みながら、登場人物たちが衒学的で生活感を感じさせない様はこれはどこか丸谷才一の小説の感触に似ていると思いが到り、その先のページで『樹影譚』が登場したので、かつて古本屋で買い求めた単行本を引っ張り出す。表題作は樹の影を描写した小説がナボコフにあったはずだと思い、老作家が当該箇所を探していくところから、最初は一人称で、次いでは三人称で不思議な体験を交え綴っていくもの。他の短篇は、初々しさの残る若い男女を側から眺めているような作と、クラブ勤務の若い女性の独白体が軽やかな作。②へ2026/06/18
ω
40
樹影譚は白壁に映る木の影が好きな話。川端康成文学賞。小説内小説(?)で主人公が作者なのか混乱するω 他の二篇は色恋に関わる作品、かなり軽妙で読みやすいけれど、ザッツ古典というか文学って感じと思い書かれた時期を調べると1987年。ほぅ。2025/04/20




