出版社内容情報
ヴェトナムでの罪を糾弾され、みずから軍事裁判を求めて記憶の空白にさかのぼる退役軍人。戦場の"薮の中"を追究するサスペンス
内容説明
四面楚歌のなかで、タイスンの胸に大いなる疑問が湧く。これは個人の罪なのだろうか?裁かれるべきは国家ではないのか?そして決意する。敢然、軍籍復帰して軍事裁判の被告席に立とうと―。戦場の“薮の中”をドラマチックに追究して、『ケイン号の叛乱』、『地上より永遠に』に連なる骨太の国民文学的傑作の大ベストセラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@80.7
51
上下巻1000頁越え長かった。ベトナム戦争時、ユエの病院での虐殺事件はどう裁かれるのかと18年も経ってから開かれる軍法会議。泥沼化した戦場で人は変わってしまう。誰もが口を噤んでしまった事件が明らかになるにつれ狂気が現れてくる。元中尉であったベンの気持ちが辛い。罪はあったのだ。甘んじて受けるベン、裁かれない部下の行為で裁かれる将校の罪と罰か。ベトナム戦争当事者だから書けた一冊。2022/05/19
frog
3
18年前のヴェトナムの戦場で起きた民間人虐殺事件を巡る法廷劇。何故、今更というタイミングで告発されたのか、真相は、世論は、といった事象を主人公の行動に焦点を当てて描き出している。そこにある不条理や倦怠感、馬鹿馬鹿しさはあの戦争に対する国民感情そのものだと感じる。長いがそれは作者の狙い通りの効果をあげている。素晴らしい作品。2010/06/18
Tetchy
3
正直、読書中はあまりにも冗長すぎやしないかと何度も洩らした。それは読後の今でも変わらない。この真相に至るまでに果たしてここまでのプロセスが必要だったのか、これは今でも疑問である。そして読んでいる最中は映画『戦火の勇気』が頭によぎった。この長い物語の末に行く着く最後の最後で読んだ甲斐があったと素直に思った。タイスンに下される裁定はこれ以上の結論は無いというべき見事な裁定である。この最後の救いで読者もまた救われた。恐らく元ベトナム従軍兵の彼らも。デミル、天晴れだ。2009/08/22
toshi
2
下巻です。タイスンは弁護士のコーヴァと共に、いよいよ公開の軍事裁判に臨みます。証人によって二転三転する証言や、検察側と弁護側の攻防など、読み応えのある法廷劇が繰り広げられます。果たして判決は?上下巻合わせて1,000ページを超える大作ですが、内容はぎっしり詰まっています。2023/03/30
H.Sato
1
このミス1989年版海外編第6位。 まさに、軍法会議ものだぞ中尉。 その軍法会議がはじまり、間にヴェトナムでの出来事が挟まれ、物語は進む。 読んでいて楽しかったのは上巻だが、下巻もコーヴァとタイスンのキャラクターに読まされる。 最後、私もきっと傘をさしかけただろう。 ワクチン6回目の副反応のなかの読了でした。 B2023/06/10