出版社内容情報
一九六三年五月、公民権デモが引きあげたあとの灼けつく路上に、黒人少女の死体が残された。白黒双方からの妨害と闘う殺人課刑事
内容説明
1963年5月、アラバマ州バーミングハム。ただでさえ暑い町が、マーティン・ルーサー・キング師に率いられる公民権運動デモで煮えたぎっていた。デモの潮が引いたあとの公園に、黒人少女の死体が残されていた。捜査は白人、黒人双方の偏見と猜疑にはばまれて難航する。「だれも知らない女」「過去を失くした女」の著者による傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
135
原題は「Streets of Fire」 アラバマ州モンゴメリーで、アフリカ系の女性がバスで席を譲るのを拒否した出来事がきっかけの1つとなった南部での運動。引っ張るのはキング牧師。その最中、女の子の死体が発見される。刑事が真相をあばいていくのだが、切り取ろうとした仕方に感服。心の揺れがある白人の代表のような刑事たちが子供の頃から抱いてきたアフリカ系の人達への言葉に出来ないような後ろめたさやシンパシーに、心から同調した。作家は白人。逆の立場から読む人達にも、粗探しはせずにいて欲しいなと思う。2019/11/10
遥かなる想い
59
『過去をなくした女』が「人間を描いたドラマ」であるならば、この本は「時代」を描いているとでも言うべきだろうか。1960年代の公民権運動が激しかりし頃、一人の黒人少女が殺され、その犯人を捜査していくと・・ 白人と黒人という重いテーマゆえに、この本にある種緊迫感を与えている。 (1993年このミス 海外 第3位)2010/05/16
himehikage
20
バーミングハム闘争というアメリカ公民権運動の一つの転機となったデモ行進の史実が、とてもうまく題材に組み込まれ描写されていて、ある意味タイムリーな読書だった。ミステリー小説としても面白かった。2020/07/11
maja
18
舞台は公民権運動のデモ行進が過熱する1963年アラバマ州バーミングハム。警察の取り締まりが強化されるなか、競技場跡で黒人少女の遺体が発見される。重いテーマを持った作品である。人種対立のなか、刑事ベンは偏見と猜疑の流れに逆らうように捜査を進めていく。街の喧騒とうって変わってひっそりした競技場跡で、遠くからただひとり見守る老人のわずか2行ほどの場面が印象に残る。専ら自身の良心に頼るような人々の意識と、その互いの距離感が事件を通して描かれている。後々じんわりと滲みてくる読後感。何度目かの再読だ。 2020/05/17
loanmeadime
9
とても面白かった。容疑者が浮かんでは否定される流れを辿るうちに、1963のアメリカ南部を良く理解したような気になります。また、刑事ベンや検死医パターソンにいわゆる「アメリカの良心」的なものも感じ、心温まります。ただ、1980年代初めにこの話を書いた作者の動機が何であったか?という疑問が残ります。この本の出版についで、スティービー・ワンダーがキング牧師の誕生日を祝う曲を作り、レーガン大統領がその日を祝日にする、というようなことがあったようで、何か、そういう流れがあったんでしょうか?2019/11/21