内容説明
戦乱の続く越後の国。守護代・長尾為景を父とする虎千代は、幼くして母を失し、父に故なくして疎んじられた挙句、養子に出されるも、忠臣金津新兵衛や百姓出の娘松江らに守られて武将の子として成長していく。天文五年(1536)に元服、喜平二景虎と名乗った。後の上杉謙信である。
著者等紹介
海音寺潮五郎[カイオンジチョウゴロウ]
明治34(1901)年、鹿児島県に生れる。国学院大学を卒業後、指宿や京都で中学校教師を務めるかたわら創作にはげむ。「サンデー毎日」大衆文芸賞受賞を機に、執筆生活に入る。昭和11年、『天正女合戦』で第3回直木賞を受賞し、文名を不動のものとした。和漢の書にあまねく通じ、綿密な時代考証の上に、独自の史観を展開し、小説に随筆に新たな領域を拓き、多くの著作を残した。昭和52年12月没
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感想・レビュー
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W-G
328
永らく積んでいたが、外出が減ったこのチャンスに。謙信も信玄も、どちらも好きな武将で、私の印象としては、信玄は"スキルの人"で、謙信は"センスの人"となる。そんな二人が対立し、火花を散らすのだから、読み物として面白くならない訳がない。さて、謙信物の代表作ともいえる『天と地と』、上巻では父の為景が前半の主役となり、謙信=景虎の出番が増えるのは中盤以降。かなり昔の作品なので、景虎の描写も、今風な才気走り方はしておらず、ぐっと抑えた筆致で、重厚なものとなっている。脇を固める女性陣の存在感の強さも特徴。2020/05/01
遥かなる想い
107
第7回(1969年)NHK大河ドラマ原作。上杉謙信を主人公に、清冽な感じで描いている。武田信玄に常に対比される武将だが、ある意味戦国大名らしい権力闘争もあり、興味深い作品になっている。NHK大河ドラマでは確か石坂浩二がうまく演じていたと記憶している。 2010/08/01
ともくん
59
上杉謙信、十五歳までを描く上巻。 父や兄たちから見捨てられ、孤独な幼少期を過ごした。 不遇の時を経て、乱れた越後の国をどう、平定していくのか。 海音寺潮五郎、会心の一作。2020/01/10
はらぺこ
53
好き。まだ上巻を読んだだけですが、最近読んだ歴史モノ・時代モノの中で1番好き。余計な解説や情報が殆ど無いので読み易い。 今まで面白味の無い大人の上杉謙信しか知らなかったので、虎千代から景虎にかけての少年期を知れて良かった。 最初は全3巻で読むのがメンドイかなぁと思ったが、残りの2冊も楽しみになった。 ただ、本音を言うと最初は名前が似てる人が多かったので途中で放置しようかと思いました。あー、乗り切って良かったーっ!2011/10/06
只三郎
48
初読み作家さんです。上杉謙信の半生を描いた本作。上巻は謙信誕生から越後平定のため、旗揚げを行ったところまでの話し。内外ともに油断のならない越後の状況、父と子との確執、そして影虎(謙信)の成長する様等、余り知らない事が多く書かれており、新鮮な気持ちで読み進めることができた。中巻ではどのように越後平定されるのか、そして武田信玄と衝突する場面はあるのだろうか?どの様な場面が描かれるのか楽しみです。2016/10/25