内容説明
執権・北条時宗は蒙古に対し抗戦を決断、西国の御家人たちに応戦の準備を下命。一方、赤橋義直は時宗の暗殺を計るが、失敗、中国へ逃亡する。河野通有は独断で、蒙古の実態を調べるべく、一族とともに中国・高麗へと渡り、幾度もの危機を潜り抜け、時宗に報告する。遂に蒙古は日本に進発。日本の運命は。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mzo
14
あれ、感想書いた気がしてたけど…。下巻の後半でようやく蒙古来たる。いわゆる"神風"が、ただの天祐として書かれてないのがいいね。元寇を扱った小説は幾つか読んだけど、壱岐逆上陸を詳しく書いたのがあれば読んでみたいな。2018/10/10
金吾
10
蒙古が近づいてくるなか、対立するそれぞれの立場が詳しく書かれています。蒙古襲来自体はかなりあっさりしていますが、題名からしても蒙古来たるなので来るまでがメインということで、根底にある国難に対する接し方がテーマだと感じました。2020/04/30
TheWho
5
蒙古に対する柔軟外交派と強硬派の対立、その後の南北朝争乱に繋がる朝廷内の混乱、鎌倉新仏教創設に伴う宗教上の争乱等、国内矛盾を抱えながらも蒙古襲来に対して、鎌倉武士団の勇猛果敢な戦ぶりが、語られて行く。筆者が後記で語っているが、昭和28・9年当時、本作を蒙古襲来にかけて再軍備に迎合する反動小説、またサビエル以前のキリスト教伝来の歴史無視、と言う批判があったと言う。当時の世評を鑑みると、筆者の骨太で真摯な歴史感に感嘆させられ、60年たった現在でも、色あせない作品である。2013/05/26
うたまる
5
娯楽歴史小説として依頼されながら、敗戦後の日本の風潮に異を唱える作品に仕上げた著者の面目躍如と言える本作。議論で対立すれども国難に際しての利敵行為は許されない、という著者の主張は、領土問題が噴出する現在の状況にもそのまま当てはまる。と同時に、無責任な精神論も諧謔で一蹴してくれる……「なんの神徳、なんの仏力。こちらに日本の神々がおわすなら、蒙古には蒙古の神々がおわそうし、日本に仏様がござるなら、向うにも仏様がござるのだ。神様や仏様は、一人一人、一家一家、一国一国の利害損得には、一向かまわしゃらんものよ」2013/01/26
Melody_Nelson
4
単に、蒙古襲来の有様を描いたのではなく、エンタメ性溢れる冒険物っぽい箇所や、当時の状況の背景などが描かれ、面白く読めました。 この頃に皇位継承権を巡る諍いの元ができて、後の南北朝となり、北条政権による鎌倉幕府瓦解の萌芽も…などなど、新たな知識も得て満足。 読後、「蒙古襲来絵巻」を全部見たくなりました。 2013/10/18